小説

2014年1月 7日

維新銃姫伝

◇◆第838回◆◇

4120044432維新銃姫伝 - 会津の桜 京都の紅葉
藤本 ひとみ
中央公論新社 2012-11-22

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会津藩降服後からの八重を描く
『幕末銃姫伝』の続編。戊辰戦争、鶴ヶ城明け渡しの場面から始まります。八重は籠城戦をともに戦った藩士たちと謹慎所に行こうとしますが、女と見破られ、母たちが身を寄せている奉公人、美代の家に向います。会津藩は降服の後、下北半島で斗南藩として生き残ることが許されます。しかし、ここは東北の最果ての地、作物は稔らず移住した人たちは大変な苦難を強いられます。大蔵は家老として斗南藩、さらには会津藩再興のために力を尽くしますが、そんなときに廃藩置県が発令されます。

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2013年12月18日

幕末銃姫伝

◇◆第836回◆◇

4120041255幕末銃姫伝―京の風 会津の花
藤本 ひとみ
中央公論新社 2010-05

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会津藩降伏までの八重を描く
2013年NHK大河ドラマのヒロイン新島(山本)八重、彼女を主人公に戊辰戦争の会津藩降伏までを描いた小説です。歴史小説であり、八重が直接会うわけではない勝海舟、佐久間象山、吉田松陰、伊藤博文、高杉晋作、坂本龍馬、西郷隆盛、近藤勇、土方歳三といった維新を彩る人たちが、八重の兄である山本覚馬の目を通じて語られ、物語に広い視野を与えています。それと同時に、当時の風習、季節の行事なども細やかに描かれている点も素敵です。

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2013年11月10日

ロケットボーイズ

◇◆第830回◆◇

4794209371ロケットボーイズ〈上〉
ホーマー ヒッカム・ジュニア Homer H.,Jr. Hickam
草思社 1999-12

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ロケット製作に熱中する高校生たち
1957年にソ連の人工衛星スプートニクが打ち上げられたことは、全米の人々に大きな衝撃を与えました。アメリカ・ウエストバージニア州の炭鉱の町コールウッドに暮らす高校生、ホーマー少年もそのひとりでした。平凡な町の平凡な少年、その彼が仲間たちとロケットを作ってみようと思い立ちます。幼なじみの三人に加え、一風変わった秀才も仲間に入れて、ビッグクリーク(高校の名前)・ミサイル・エージェンシーを作った彼は、試行錯誤を繰り返しながらロケット発射実験に夢中になっていきます。

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2013年10月 8日

シナン

◇◆第822回◆◇

4122049342シナン〈上〉 (中公文庫)
夢枕 獏
中央公論新社 2007-11

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史上最大のモスクを建てた男の生涯
トルコ最大の建築家といわれるミマール・シナンは、1488年トルコのカッパドキア地方のアウルナスというキリスト教徒の村に生まれました。24歳のとき、デヴシルメという少年徴集制度によって徴用され、イェニチェリとよばれる兵士集団に入れられています。同時にキリスト教からイスラム教に改宗させられました。オスマン帝国では、キリスト教の信仰を維持する自由がありました。また、この徴集制度によって支配下のすべての地域から優秀な人材を集めることができたのです。

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2013年9月15日

海に降る

◇◆第818回◆◇

4344021177海に降る
朱野 帰子
幻冬舎 2012-01-13

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爽快な深海潜水エンターティンメント
大深度有人潜水調査船しんかい6500の女性初のパイロットを目指す天谷深雪、深海に棲む未確認巨大生物を追い求める高峰浩二、この二人を中心にお話が進みます。しんかい6500とその周辺の人々が描かれており、この物語を読んで初めて大深度に潜るというのは、宇宙へいくよりも大変なことなのだと認識しました。しんかい6500が所属する海洋研究開発機構(JAMSTEC)の全面協力を得て書かれた物語というだけあって、細部の描写にリアリティがあり、JAMSTECの活動を一般人に伝えるのに最適の物語になっています。

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2013年7月26日

北の海

◇◆第812回◆◇

4101063370北の海〈上〉 (新潮文庫)
井上 靖
新潮社 2003-08-31

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井上靖の自伝的三部作の最終作
井上靖の自伝的三部作の最後にあたるのがこの作品です。『しろばんば』が小学時代、『夏草冬涛』が沼津中学時代を取り扱っているのに対し、ここでは、沼津中学を卒業し、旧制高校の受験に失敗して浪人生活をしている半年を描いています。著者の18,9歳のころを写したものだといいます。

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2013年5月26日

友情

◇◆第803回◆◇

4087733769友情
フレッド・ウルマン 清水 徹
集英社 2002-10-25

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悲劇的な時代を背景にした少年たちの友情物語
彼は、1932年1月、私の人生にはいってきて、それからは一度も立ち去ることはなかった。あのときから四半世紀あまりが過ぎた。----この出だしで始まるこの物語は第二次世界大戦直前のドイツ、シュヴァーベン地方のギムナジウムが舞台です。そこにやってきた貴族の美少年コンラディン、彼に憧れ友情を得ようと熱烈に思うユダヤ人医師の息子であるハンス。

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2012年10月25日

フライド・グリーン・トマト

◇◆第776回◆◇
フライド・グリーン・トマト HDマスター [DVD]
フライド・グリーン・トマト
ファニー フラッグ Fannie Flagg

構成の見事さに脱帽する小説
小説というのは、ストーリーもさることながら、構成によってどのようにでも変わると感じた作品でした。全米でベストセラーになり、映画化もされています。20年前の出版ですし、映画も見ていませんが、久しぶりに面白い小説を堪能しました。これが映画化されたとき、この物語構成はどのように料理されたのだろうかと興味深く思います。

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2009年7月27日

短編小説を読もう

◇◆第597回◆◇

4005005241短編小説を読もう (岩波ジュニア新書)
阿刀田 高  岩波書店 2005-12

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大人向けの短編小説ブックガイドとしても
岩波ジュニア新書というのは、大人にとってその分野の格好の入門書になっています。本書も、あまり読書の習慣がない、ハウツーものしか読んでいない、という成人にむけたブックガイドとしていいのではないかと思います。題名のとおり内外の優れた短編小説を選んで紹介してあり、芥川龍之介、コナン・ドイル、エドガー・アラン・ポー、志賀直哉、松本清張、中島敦、谷崎潤一郎らの作品が並んでいます。

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2009年6月22日

化石

◇◆第580回◆◇

404121629X化石 (角川文庫クラシックス)
井上 靖
角川書店 1969-11

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死を同伴者として生を見る
主人公の50代半ばの実業家は旅先のフランスで偶然自分が不治の病に冒されていることを知ってしまいます。そのときから彼の傍らにはぴったりと「死」という同伴者ができます。小説の大部分はこれ以後彼がこの同伴者と言葉を交わしながら、自己の生と死について考え続ける様子が描かれています。本当は誰もが生れた瞬間からこの同伴者を連れています。死からみた生の姿、そのときそれがどれほどくっきりと見えるかを知らされる小説です。

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