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2018年7月 7日

進歩 人類の未来が明るい10の理由

◇◆第907回◆◇

479496997X進歩: 人類の未来が明るい10の理由
ヨハン ノルベリ Johan Norberg
晶文社 2018-04-24

by G-Tools

世界は日々ますます素晴らしくなっている
テロ、環境破壊、犯罪、難民、貧困、戦争、飢餓…、メディアには悲惨な情報があふれ、人類はいったいどうなってしまうのか、と思っていませんか。しかし、ここで著者は力強く宣言するのです。そんなものは嘘っぱちだ、と。世界は日々住みよくなっており、未来は明るいという事実をたくさんの資料をもとに本書の中で明らかにしています。

著者はスウェーデンの歴史家で、反グローバリズム運動への批判を展開してきました。古き良き時代などというものは幻想であり、いまこそ、食べ物が十分あり、衛生状態がよくなり、寿命も伸びた人類史上最高のときなのです。そして、その最高は日進月歩で日々さらに改善が進んでいます。それらの証拠を次の10の項目について詳細に述べています。

1)食料
今でこそ、飽食で先進国では肥満が問題視されていますが、人類はずっと飢餓と戦ってきました。食糧生産は不安定で、すぐに飢饉へとつながりました。その不安を克服できるようになったのは化学肥料を初めとする農業技術の改良でした。また、食料をグローバルで交換できるようになったのも大きいことです。

2)衛生
生命維持には衛生状態の改善が不可欠です。ゴミや排泄物を適切に処理しすること、安全な水を確保することが健康には欠かせません。病原微生物を発見し、それを防ぐ方法が進歩したおかげで、ペスト、コレラ、天然痘、といった大規模な感染症がほぼ押さえこまれるようになりました。

3)期待寿命
つい100年ほど前まで人生は短いものでした。人々は王侯貴族ですら子どものうちにばたばたと死に、母親たちは出産で命を落としました。現在、がんや心肺疾患を気にするようになっていますが、かつてはそれを気にするほど長生きできる人の方が少なかったのです。

4)貧困
人類はもともと貧困でした。私たちは豊かになったために先祖たちがどれほど劣悪な生活を送っていたかを忘れてしまっています。18世紀以前の記録では、現在の先進国であろうとも、平均的な市民は現在のハイチ、リベリア、ジンバブエ並みの生活水準でしかありませんでした。しかし、産業革命以降、それらは劇的に変化しました。経済が離陸することによって人々はしだいに貧困から抜け出せるようになり、その影響はヨーロッパからアジアへ、アフリカへと広がっていきました。

5)暴力
戦争と暴力は人類の常態でした。文化遺産は暴力と殺人に満ちています。ギリシャ神話も聖書もそうであり、教会では聖人たちが血みどろで殺されている画像や彫像があふれていました。処刑は娯楽ですらあったのです。殺人率は近代化と市場経済、識字率の上昇でしだいに減りました。戦争も現在では民主主義国同士の間では滅多に起きなくなっています。

6)環境
産業革命以後、環境汚染の度合いはひどくなりました。しかし、これも先進国からその危機的状態に気づいて、環境への負荷を減らす技術を開発しました。今日では技術と豊かさが環境を守るための最も重要なものになっています。より少ない資源をより効率的に使い、さらに新しいテクノロジーを開発して環境負荷を減らすことも日々可能になっているのです。

7)識字能力
200年前、世界人口のうち読み書きできるのは12%ほどでした。それが現在では文盲率が12%ほどになっています。識字能力は最も重要な技能です。新しい技能を身につけることができ、知識と娯楽の世界に参加できます。貧困を減らし、その人の健康とその子どもの健康にも大きな影響を与えます。

8)自由
1800年当時、世界の60%の国で奴隷制が合法でした。文明の曙から奴隷制は存在し、聖書にも奴隷は当然のこととして記されています。しかし、18世紀以後、啓蒙主義の高まりで、奴隷制は次々廃止され、現在ではそれを合法とする国は世界中にひとつもなくなっています。

また、もうひとつ決定的な進歩としては、国家の力が制約され、支配者がきまぐれに権力を行使できなくなりました。1900年当時、すべての男女が一票を持つ体制の国はゼロでした。しかし、そこからしだいに選挙権は拡大し、2000年では58%がこうした民主主義の下で暮らしています。独裁者すら、民主主義を指示する口ぶりをみせなければならなくなっています。

9)平等
人種差別は古代からずっと人間の自然な考え方でした。他の民族に対する敵意、そして戦争、奴隷化というのはどこでも見られたことであり、歴史はそれの繰り返しでした。しかし、社会が豊かになり、それにともなった寛容性、オープン性、権利平等が拡大していきました。

同様のことは女性の権利拡大にも現われています。かつて女性は結婚までは父親のものであり、結婚したら夫のものでした。1900年当時、女性に選挙権があるのはニュージーランドだけでした。しかし、今日ではヴァチカンを除けばほぼすべての国で女性は選挙権を持っています。

最近では性的少数者の権利も認められてきました。ほんの数十年前まで、ゲイのセックスは違法でした。しかし、現在ではまだアフリカ、中東、南アジアでは違法ですが113ヶ国で合法になっています。同性の結婚も2001年にオランダで認められて以降、21ヶ国で認められるようになりました。

10)次世代
かつて児童労働はあたりまえのことでした。子どもは一家の重要な働き手であり、できるだけ早い時期から働き、社会もそれを当然のこととしていました。子ども時代はなく、当然心身の発達にも有害な影響がありました。イングランドの児童労働率は1851年には28%あり、それが1911年には11%に減り、やがて姿を消しました。これが次々と他の国へも拡大していきました。

子どもは家計のために働かされる存在ではなくなり、より長く生き健康的に幸せに暮らす期待を持たれる存在になったのです。200年前の10歳の女の子が暮らす世界は食料が乏しく、衛生環境が劣悪で学校へも行けず、そのために字も読めないままだったでしょう。

今日の子どもは比べものにならないほどいい条件のもとでスタートすることができます。あらゆる人がスマートフォンやコンピュータを持ち、地球上の誰とでもつながることができます。かつて接続された知識の世界に住めるのはほんの一握りの人だけでした。それを思えば人類がどこまで到達したのか、ここ200年ほどの進歩は信じられないほどです。

なぜ悲観論が蔓延するのか
これらの明るい事実を列挙した本の最後に、著者は「それでもみんなが納得しないわけ」として、世の中に悲観論が広がっている理由をあげています。それらは、悲観的なニュースの方が人々の関心をひきやすいこと、悪いことの方が印象に残ること、などです。飛行機が無事発着してもニュースにならないが、落ちれば大ニュースという具合です。いいことは「あたりまえ」になってニュースにはならないのです。

著者が主張するのはもっと大きな視点で全体の進歩を見ようということです。目先の悲観論に踊らされて、間違った方向に進んではいけません。何が貧困を減らし、何が環境によく、何が人々の幸福のために真に重要なのか。悲観論を煽るメディアを前にしたとき、立ち止まって考えることが大切です。


進歩: 人類の未来が明るい10の理由
進歩: 人類の未来が明るい10の理由
ヨハン ノルベリ Johan Norberg

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