« ダイエットの科学 | トップページ | 遺伝子-親密なる人類史- »

2018年1月 8日

世界を変えた6つの「気晴らし」の物語

◇◆第902回◆◇

4023316326世界を変えた6つの「気晴らし」の物語【新・人類進化史】
スティーブン・ジョンソン 大田直子
朝日新聞出版 2017-11-20

by G-Tools

遊びがつくってきた歴史
学校で習う歴史では、世界を変えるのは政治や経済の堅苦しい出来事だと思いがちです。革命や戦争が歴史をつくった一面はありますが、遊び、楽しみ、といったものが世界を変えるのに大きな役割を果たしてきたことが本書では語られています。世界を変えた6つの「気晴らし」とは、ファッションとショッピング、音楽、味、イリュージョン、ゲーム、レジャーランドです。

進化論的ものの見方をすれば、人間は必要があって何かを切望し、そのために創意工夫をし、画期的な新しい技術、方法、仕組みを生み出してきたと考えがちです。必要は発明の母というわけです。ところが、実はそういうものは意外に少なく、現代社会を支えているコンピュータやロボットもルーツをたどっていくと「気晴らし」に端を発しています。

風が吹けば桶屋が儲かる
遊びや楽しみのために生み出されたものが、そこから思いもかけないものたちと結びつき、発展していくさまは、「風が吹けば桶屋が儲かる」方式とでもいうような話です。テクノロジーだけでなく、たとえば、グローバル化、民主主義、株式市場、確率論といったものも、その発展には遊びが大きく関与しています。

私たちは資金と市場の観点からの後知恵でものを考え勝ちです。それらは大胆な投資家や効率的な市場や発明家の話に焦点を当てた物語になってしまいます。何か目的があって、それにむかって邁進し、実現しましたというお話です。ところが実際はそうではないことがほとんどです。

最初のグローバル化である大航海時代のきっかけは香辛料でした。なぜ香辛料なのか、不思議といえば不思議です。それは人間の食生活にどうしても必要なものというわけではないからです。生存するために食べないといけない必須の食物ではなく、いわば食生活のちょっとした彩にすぎないコショウやナツメグといったものをなぜそれほどに求めたのか。

いまではコショウも木綿もどこにでもあるありふれたものになっていますが、それらがヨーロッパ世界に初めて登場したときにどれほどの衝撃を与えたか、当時の記録をもとに説いています。そして、著者は珍奇で目新しいもの、美しいものを求める心こそが、人間のもっとも人間たるゆえんであると述べています。ここで取り上げられているほかの「楽しみ」もどこか似たところがあります。

驚きを探す本能
人間の「驚きへの欲求、美しいものへの渇望」こそがあらゆるイノベーションの源にあるのです。遺伝子はわれわれを生存と生殖にふさわしい方向へとかりたてます。子孫を残せる配偶者を見つけ、家庭を築き、子どもとつながりを生み出す…、そうした方向付けは保守的で誰にでも理解できます。

ところが、人間はもうひとつこれらと全く異なる本能をなぜか持っているのです。習慣から抜け出し、新しい経験をし、驚き混乱しわくわくすることを求める本能です。まだ何も自分ではできない新生児でさえ、驚きを求める本能を持っているといいます。

遊びとは、正しい仕事と職をサボること、大人にとってはどこか後ろ暗い匂いを漂わせているものです。ただ、その逸脱がめぐり巡って社会を発展させ、次の世界への扉を開いてきたのは紛れも無い事実です。未来を見たいなら遊びの周辺を見よ、と著者は示唆しています。


世界を変えた6つの「気晴らし」の物語【新・人類進化史】
世界を変えた6つの「気晴らし」の物語【新・人類進化史】
スティーブン・ジョンソン 大田直子

関連商品
世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史
カラヴァッジョの秘密
日本問答 (岩波新書)
世界神話学入門 (講談社現代新書)
トラクターの世界史 - 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち (中公新書)
問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール
食と健康の一億年史
新しい分かり方
戦争がつくった現代の食卓-軍と加工食品の知られざる関係
アフター・ビットコイン: 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者
by G-Tools


« ダイエットの科学 | トップページ | 遺伝子-親密なる人類史- »

世界史」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ダイエットの科学 | トップページ | 遺伝子-親密なる人類史- »