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2017年8月29日

しんがり 

◇◆第899回◆◇

4062816091しんがり 山一證券最後の12人 (講談社+α文庫)
清武 英利
講談社 2015-08-21

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号泣会見
1997年の山一證券の破綻を覚えておられる方は多いでしょう。当時の野澤社長が号泣しながら記者会見をしたことが特に記憶を鮮明にしました。本書を読めば、あの社長は土壇場になって急遽社長に祭り上げられ、実情を知らされたのは破綻直前だったことがわかります。

バブル崩壊直後から、山一證券は法令違反の「飛ばし」と呼ばれる取引で、膨らむ一方の損失隠しをおこなっていました。当時のワンマン経営者だった行平会長をはじめとする経営陣は、それをやむをえないことと黙認し、最終的にあの破綻を招いたのです。

巨額損失隠しの真相究明
『しんがり』は破綻後も会社に残って真相究明にあたった最後の12人の姿を追ったノンフィクションです。山一證券が会社更生法の適応さえ認められず、自主廃業に追い込まれたのは、2600億円を超える簿外帳簿の損失の存在でした。会長や社長を含むごく一部の経営陣しか知らなかったこの巨額損失の存在が設立100年を超える名門証券会社の息の根を止めたのです。

社内調査でこの真相を解明していくのは、業務監理部門(ギョウカン)の担当者たちです。山一證券においての花形部署、エリートが配属されるのは、ホールセールと呼ばれる法人営業部署(ジボウ)でした。ギョウカンは「場末」と呼ばれていました。巨額の損失をつくったのは、バブル期のジボウの派手な営業の結果でした。

見事な報告書
題名の「しんがり」とは、負け戦のときに退却していく軍勢の最も後ろに位置して、追撃する敵をかわしながら、味方が逃げるのを助ける部隊を意味します。真相究明にあたった彼らは解散していく会社に残っているわけですから、清算業務を続けつつ、最後は給料も出なくなり、再就職も最後という状態を甘んじて受けます。

彼らを支えているのは「誰かがやらなければならないこと」という使命感、「なぜこんなことになったのか、真相を知りたい」という山一證券の社員たちの願いでした。一般にこうした社内調査はおざなりで形ばかりのものに終わりがちです。しかし、山一證券の場合、最後の記者会見で、集まった記者たちをうならせるほど精緻な調査報告書があがってきました。

これらを元・読売新聞社会部記者として数々のスクープを放った著者が綿密な取材を元に描いています。登場するそれぞれの人々のキャラが立っていることが、このノンフィクションを断然おもしろいものにしています。


しんがり 山一證券最後の12人 (講談社+α文庫)
しんがり 山一證券最後の12人 (講談社+α文庫)
清武 英利

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