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2016年11月29日

ファスト&スロー

◇◆第892回◆◇

4150504105ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ダニエル・カーネマン 村井章子
早川書房 2014-06-20

by G-Tools

認知的錯覚はなぜ起きるのか
私たちは避けようのない認知的錯覚を持っています。合理的に考えている、と思いたいのですが、実態は必ずしもそうではありません。日常生活が支障なく送れる程度には合理的ではあるものの、常に完璧に合理的ではない、ということを本書ではさまざまな例を出しながら明らかにしています。

著者のカーネマンはそれまでの経済学が前提としてきた合理的人間観を覆し、心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞しました。合理性の幻想を取り払い、より適切な意思決定のためにはどうすればよいのか、考えるためのヒントが散りばめられています。

システム1とシステム2
まず著者は人間の意思決定にかかわる存在を二つの比喩として描写します。素早く直感的に働く(ファスト)のシステム1とゆっくり(スロー)と論理的に働くシステム2です。システム1は自動的に働き、大雑把に状況を把握して素早く判断を下します。システム2はシステム1の導き出した答えを選別し、最終的に判断を下します。

システム2を働かせるためにはエネルギーがいるため、なかなか発動させられず、疲れやすいという弱点を持っています。そのため、私たちはシステム1の下した結論に引きずられてしまいがちで、認知的錯覚を起こしやすくなります。

エコンとヒューマン
それまでの経済学では人間は完全に合理的な存在である、と考えられてきました。それを本書では「エコン」と表現しています。ここでいう合理的とは、論理的一貫性があるということです。コンピュータのように行動できる人間とでも言えばいいでしょうか。

しかし、実際の人間は常に完全に合理的に行動するわけではありません。この合理的ではない部分を分析したのが行動経済学であり、カーネマンはその創始者のひとりです。完全に合理的なわけではないことから生まれる問題がいろいろありますから、行政機関や制度はその性質を補うよう運用される必要があります。

一方、起業家や資本家、投資家といった人々は「自分は他の人よりうまくできる」という認知バイアスによって行動する部分があります。資本主義はこうした心理を原動力として動いているのです。人々の欲望を刺激するマーケティングの手法は、大衆のシステム1を利用することで成り立っています。

経験する自己と記憶する自己
思い出というのは、記憶する自己がなぜる技でしょう。実際に経験しているときそこにいるのは経験する自己ですが、それは後になると記憶する自己に取って代わられて、経験する自己は沈黙してしまいます。

これも認知的錯覚のひとつです。経験する自己はシステム1の産物であり、記憶する自己はシステム2の産物です。記憶する自己は持続時間を無視し、ピークとエンドを過大に重視して、後知恵バイアスの影響も受けやすい特徴があります。

経験する自己は言葉を持たず、記憶する自己のみが発言権を持つことから、ある出来事に対する合理的選択については疑問を持たざるを得ません。経験した通りには記憶していないからです。

認知的バイアスをさけるために
著者はこうした知識を得ることによって、客観的で合理的な判断が下せるようになるかどうかということに関しては、悲観的です。自分自身を振り返って認知バイアスを軽減できているとは思えないと何度も書いています。

システム1の反応はほぼ反射的なもので、まばたきのようなものです。いかに意識してもそれを避けることは困難です。しかし、対策はあります。それは、認知的バイアスがかかる可能性を常に意識に上らせておき、判断や選択のエラーを犯す危険に対する警戒を怠らないことです。

自信満々で突っ走りやすいシステム1に手綱をつけ、怠け者のシステム2のお尻をたたいて応援に出向かせればよいのです。


ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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