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2016年9月21日

習得への情熱

◇◆第890回◆◇

4622079224習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法
ジョッシュ・ウェイツキン 吉田 俊太郎
みすず書房 2015-08-18

by G-Tools

達人への道
著者は幼い頃はチェスの神童といわれ、大人になってからは太極拳推手の世界選手権で優勝を飾っています。チェスと武術という一見何の関係もなさそうな二つの競技でいずれも世界クラスの力を発揮するに至った背景を、著者自らの言葉で語っているのが本書です。達人になるためには何をすればいいのか、どのように考えればいいのかについてのヒントが詰っています。

対戦型の個人競技をする人であれば競技の種類を問わず生かせると思います。最も上級のレベルになると、肉体と精神の双方の要素が勝利のために欠かせないものになります。またそうした競技に縁がない人であっても自らの生活の質をあげるために活かせることがいろいろあります。

本書は三部に分かれており、著者が幼くチェスの世界でチャンピオンを目指していた頃のことは第一部に書かれています。彼のその時代のことは父の手で『ボビー・フィッシャーを探して』というノンフィクションになり、後に映画化もされました。それによって10代の彼は選手としては別の意味での脚光を浴びることになります。

それがチェスを離れるきっかけのひとつになったようです。また、そのころコーチから勧められた戦法が、自分のチェスのスタイルとは大きく異なっていたことで、戦い方に迷いが生じました。さらにその時期に太極拳と出会い、その面白さにひかれ、しだいにそちらに活動の中心を移して行きました。

最初は動く瞑想としての太極拳でしたが、そのうちに推手という競技太極拳を開始します。生来の運動神経のよさ、チェスでつちかった心理的な力、素晴らしい探究心、それらをあわせて彼はめきめきと力をつけていきます。

すべてをひとつにまとめるために
第二部と第三部では競技チェスの世界と推手太極拳でチャンピオンとなっていく過程で彼がマスターしたコツについて述べられています。

・負の投資
勝つためには何度も負けなければならない。負けることを恐れていて勝利だけにこだわっているとやがてその中で小さくまとまってしまい、そこから外に踏み出せなくなる。負けることは、苦痛だが、負けることでしか学べないものがある。それを「負の投資」と呼ぶ。

・より小さな円を描く
大きく派手で見栄えのすることをやろうとするよりも基本的なひとつのことを深く探求し掘り下げていく。ひとつの動作が確実にできれば、それはすべてのことにつながっており、応用がきくようになる。

・逆境を利用する
怪我や思うようにならないことはつきものである。そうしたときは、想像力を使ってそれを新たな飛躍のためのバネとする。著者は全米選手権の前の地方大会で右中指を骨折した。しかし、それを左手を鍛えるための機会とし、それによって左手の能力を飛躍的に高めた。

・時間の流れを緩める
それほど上達していない人には神業のように見えるものがある。しかし、基本的な練習によって動作の細かな部分を自分のものにしていれば、情報をいくらでも圧縮できる。情報を圧縮できれば、状況をスローモーションのように見ることが可能になる。

・今という瞬間に心をおくことのパワー
競技者として非常に優れた人は、強いプレッシャーの中で平静を保ったまま緊張感を保ち続ける方法を知っている。プレッシャーを緩和したいと望む心が相手につけこまれる隙となる。最終的に勝負を決めるのは心である。深く心を流れるように現在進行形の今にとどめること。それには日常生活やふだんの練習の瞬間にも心をそこにとどめることから始める。いつだってすべてがかかった重要な瞬間なのだ。

・ゾーンの探究
今にとどまるための訓練として最適なのものに、ストレス・アンド・リカバリーという干満を利用した方法がある。インターバル・トレーニングを利用して行う。たとえば、限界ぎりぎりの一歩手前まで走る、エアロバイクをこぐ、泳ぐなどをやり、その後1~2分のインターバルタイムを置き、再びきりぎりまでやることを繰り返す。これは精神的なことでも試みることが可能で、気持ちを集中させることとリラックスの間を容易に行き来できるようになれば、ゾーンに入る準備が整っていく。

・引き金を構築する
パフォーマンスをピークに持って行くための触媒を外部に探すのではなく、内部に作ってしまう。人は誰でも心からリラックスでき集中できる活動を持っている。その活動の前に何らかのルーティーンを形作り、それを身体にしみこませてしまう。本書の中では軽食を作って食べ、瞑想をし、ストレッチをしてボブ・ディランの曲を聴きいて、その後その活動に入るという例が示されている。最初はかなり時間が長いが、しだいに時間を短くしていき、そのうちに一瞬でリラックスできるように持っていける。

・サンダルを作る
いつも最高の条件の中でパフォーマンスできるとは限らない。むしろその逆の方が多い。汚い手を使ってくる相手、自分自身の失敗など怒りや後悔にとらわれて、自分を見失ってしまうと勝てない。そういうとき、ナーバスになっている自分の心をみて、その心理を逆に燃料にできるよう訓練することが大事だ。偉大なパフォーマーはそういうことに長けている。


習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法
習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法
ジョッシュ・ウェイツキン 吉田 俊太郎

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