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2016年6月 1日

サイロ・エフェクト

◇◆第888回◆◇

4163903895サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠
ジリアン テット Gillian Tett
文藝春秋 2016-02-24

by G-Tools

高度に分類化されすぎて機能不全に陥る
これは現代の大規模になった組織のいずれもが抱える問題について扱っています。組織が大きくなると、それをを機能的に動かすために専門領域に分けて活動するようになります。専門性を発揮するためにそれは必要なことですし、それによって効率があがる部分も確かにあるのですが、しだいにその分類は当初の目的を外れ、内向きのセクト意識の強いものへと変化して行きます。そして、互いの縄張りの中に閉じこもり、縦割りの中で変化に対応できない組織へと変わって行きます。

これは業種を問わずあらゆる組織に起きることであり、それを著者は「サイロ」と呼んでいます。牧草などを積み上げておくあのサイロです。日本の大企業のサイロの代表としてソニーが出てきます。ウォークマンを生み出し、20世紀の末頃にはクールの代表格であったこの企業がいかにサイロの罠に落ち込み没落していったか、が第二章でつぶさに語られています。

サイロに落ち込んだきっかけはソニーが採用したカンパニー制でした。各部門を独立採算制の小さな会社組織のようにして競わせた結果、互換性の無い二つのウォークマンを発表せざるをえない事態になりました。サイロ同士が互いの技術を内側に抱え込み、会社組織として横のつながりがなくなってバラバラになった結果でした。サイロに気づいたストリンガーCEOがそれを打破しようとしますが、日本語を話せない彼には土台無理なことでした。

インサイダー兼アウトサイダーの視点
著者はフィナンシャル・タイムズ紙のアメリカ版編集長ですが、大学では人類学を専攻し、フィールドワークをおこなったというユニークな経歴を持っています。彼女自身、最初はこの経歴を誇れるものではないと思っていたようですが、サイロについて知るには人類学者の目を持って観察することが大事だということに気づいたと記しています。

インサイダー兼アウトサイダーの視点を持つということです。こういう視点を持ち続けるのは言葉で言うほど簡単なことではありません。新たな潮流は新参者、周辺にいる人などによってもたらされることが多いのは、彼らが組織の中心部にいる人には持てない視点を持っているからです。「当たり前」を「当たり前」でないものとして見られる目をどう確保するか、これが大きな課題です。

情報をシャッフルして並べなおす
サイロそれぞれが持っている情報を重ね合わせてみるとそこから思いもよらなかった情報が浮かび上がってくるケースがあります。ニューヨークの違法建築の問題を扱った序章、シカゴの殺人予報地図を作った第五章にはそのことが描かれています。

第三章と第四章ではサブプライムローンでの経済危機が描かれています。なぜそれを予測できなかったのか、について、サブプライムローンの存在自体が従来の金融の分類から外れており、そこが見えなくなっていたことが、あれほど大きな危機を招いた一番の原因でした。分類されていないものは存在していない、のです。

サイロ化を避ける試み
第六章にはフェイスブックが出てきます。まだ若い企業であるフェイスブックはCEOのザッカーバーグ自身がこのサイロ化に危惧を抱いており、それを避けようとする試みをいろいろと打ち出しています。社屋の建物のデザインにもそれは現われていて、社員たちができるだけ違う部署の人ともさりげなく言葉を交し合ったりできるような構造になっています。

第七章にはクリーブランド・クリニックというアメリカの最先端の病院が外科とか内科という診療科の枠組みを取り払い、患者の訴えを中心に据えてそこに医療従事者たちがチームで向かっていこうという体制をとろうとしている試み描かれています。

これらの試みを著者は「成功例」として記しているのではなく、あくまで試みとしています。サイロ化は常に進行するものであり、不断の工夫と努力でそれを避けていなければ、いつしかサイロ化は蔓延してしまいます。ソニーのように大成功をおさめた組織ほどその成功体験が邪魔をしてサイロ化に陥りやすいという皮肉な現実があります。「大組織病」という従来から言われてきた概念に「サイロ化」という新しい言葉を与えた本です。


サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠
サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠
ジリアン テット Gillian Tett

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