無病法
◇◆第885回◆◇
![]() | 無病法 ルイジ・コルナロ 中倉 玄喜 PHP研究所 2012-05-19 by G-Tools |
●食べることを最小限にするのが健康のもと
著者のルイジ・コルナロはルネサンス期のヴェネツィア人で102歳まで活力に満ちて健康に暮らし、午睡に入った後目覚めなかったという健康長寿の見本のような生涯を送りました。彼はヴェネツィアの名門に生まれ、若い頃は放縦な生活を送り、宴会続きと食べすぎで30代から40代半ばにかけて「生活習慣病」に侵され、命も危うい状態になりました。そこから医師の勧めによって食事を節することを始め、この健康長寿を実現したのです。
本書は彼が書き残した81歳、86歳、91歳、95歳のときの文章を中心にそこに解説を加えたものです。彼は健康の秘訣は何よりも「ごくわずかしか食べなかったこと」と書いています。現代栄養学の知識などまだ知られておらず、バランスよく食べるとか、栄養素がどうのとか言う知識は何もなかったはずです。
●食事を節することによってすべてが変わる
現代でさえ、102歳というと珍しい長寿者です。500年前にここまでの健康長寿を達成したのですから、当時から大きな注目を浴び、多くの人がその秘訣をたずねに来たようです。「食を節すること」、彼はそのことを何度も繰り返しています。体調がよくなっただけでなく、性格からも怒りっぽさが消えたといいます。
彼があまりにわずかしか食べないために心配した周りの人たちから強く勧められて食事の量を増やしたところ、体調が悪くなったと書いています。彼が85歳当時とっていたのは一日でパン、卵の黄身、少しの肉、スープ、これらをあわせて350g、ワインを400ccでした。現代栄養学でこれをどう解釈できるのかわかりませんが、バランス、量ともにはなはだしい不足に見えます。しかし、彼はそれで102歳の健康長寿な人生をまっとうしました。
●食べ放題、飲み放題のツケ
当時も食べすぎることによって命を縮める人は多かったようです。貧しければぎりぎりの食生活を余儀なくされますが、彼の知人・友人は彼と同じ階級に属する人たちであり、食事に不自由することはありませんでした。自分の食欲の赴くままに食べ放題、飲み放題ができたと考えられます。これは、現代の日本人の大半と同じでしょう。
食事を節することができずに早くに命を落としたり、早い時期から廃人のようになってしまった人たちのことを彼は惜しんでいます。「我慢して長く生きるより、短くても好きなように生きる方がよい」などと言い訳している。食欲を律するといかに幸福な生活を送ることができるかをかれらは知らないのだ---コルナロはこのように述べ、それに続いて、養生を心がけないものにとっては晩年は禍であると書いています。
これは現代でもあてはまるでしょう。現代ではなおさら、短くすっきり死ぬことはむずかしくなっています。糖尿病、メタボリックシンドローム、それにともなうさまざまの合併症、がん、それらの大半が制限のきかない食欲を土壌に育っています。
●量の制限が最も大事
食欲にまかせて食べ放題、飲み放題にした結果のさまざまな病が早ければ30代あたりから人々を襲います。あれが足りない、これが足りないと健康情報でもいろいろ言いますが、「食べ過ぎている」という土台に目を向けなければ、どんな健康食品を摂取してみたところで無駄です。
食べ物の消化吸収というのは身体にとってかなりの大仕事です。消化管の内部は、実は身体の外です。そこに入った食べ物をさまざまな消化酵素と消化管の運動によって消化し、腸壁から吸収します。ここで初めて自分の体内に入ることになるのです。それらの一連のことが自律神経の働きによって本人の知らないところでスムーズにおこなわれています。
食べすぎや飲みすぎは、消化吸収活動に常に多大な負担を与えて続けていることになります。胃や腸はそれなりのサインを出しますが、沈黙の臓器といわれる肝臓、腎臓、膵臓などは何ら目立ったサインを出しません。過労死するまで働き続けるでしょう。
もっとも大事なことは量の制限であるとコルナロは繰り返し述べています。もし量を制限することができたら、メリットは数多いと思われます。第一に自分自身の健康、第二に飲食費の削減、第三に健康を害することを避けることによる医療費・介護費の削減…、まだまだあるでしょう。食欲という暴れ馬を見事に制御できたなら、物心両面で豊かな人生が謳歌できるのです。
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