« スタンフォードの自分を変える教室 | トップページ | スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? »

2014年10月20日

ホット・ゾーン

◇◆第877回◆◇

4864103674ホット・ゾーン――「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々
リチャード・プレストン 高見浩
飛鳥新社 2014-09-25

by G-Tools

エボラ出血熱の生々しいドキュメント
エボラ出血熱の感染が広がっています。すでに感染者は九千人を越え、死者も五千人になろうとしています。ギニア、リベリア、シェラレオネといった西アフリカの国々だけでなく、最近ではアメリカ、スペインなど先進国でも医療従事者の感染があり、全世界的な流行になるのではないかとの懸念が広がっています。エボラ出血熱は1976年にスーダン(現:南スーダン)で最初の患者が発生して以来、数年周期で散発的な流行が見られてきました。

本書は前半でエボラ出血熱の症状と恐ろしさをホラー小説を思わせるタッチで描いています。エボラ出血熱はエボラウイルスによって感染します。現在のところ、数種類のエボラウイルスが特定されています。野生動物を宿主とし、それらと接触することによって人間に感染します。本書では、同じ洞窟を訪れたフランス人の男とデンマーク人の少年が感染して死亡する様子が描かれます。

また、患者を収容し看護していた病院の医療従事者が感染する様子も描かれており、ぐいぐい引き込まれ、読む手を休められません。本書ではこれら人間の感染例とは別に、アメリカのワシントン郊外にある輸入猿の飼育施設レストン・モンキー・センターの猿がエボラ出血熱で次々に死亡する様子も描かれています。

猿から人間に感染する可能性は大きく、このとき陸軍の医療特殊部隊がこの施設に対し、バイオハザードに対応する作戦を行いました。それにあたった陸軍の医療専門家、兵士たちの緊迫したドキュメントは読み応えたっぷりです。これら医療の最先端で働くウイルスハンターたちは、感染の危機と隣り合わせです。

致死率80%以上というようなウイルスが全世界的に流行したら、人類の危機であり、ウイルスはなんとしても封じ込めなければいけません。本書はいったん絶版になっていましたが、今回のアウトブレイクを機に緊急復刊されました。日本ではまだ感染者が出ていませんが、これだけ飛行機で人々が頻繁に往来するようになっている今、感染が起こるのは時間の問題と考えていたほうがいいでしょう。

エボラ出血熱は空気感染はしない、というのが今のところ定説になっています。しかし、このレストンのウイルスは空気感染を引き起こしており、いつ他のエボラウイルスに突然変異が起きて空気感染を起こすようにならないとも限りません。もし、空気感染するようになれば、流行の度合いは接触感染とは比べ物にならないほど迅速なものになります。

エイズは初期の対策を怠ったために全世界的な感染症になってしまいました。その轍を踏まないために、今の間にエボラウイルスをどう封じ込めるかは、時間との闘いです。さらに今回の感染爆発が幸いにして収束したとしても、この先何度も同様のことは起きます。著者は人間が開発の手を自然の深部に伸ばしていったことが、密林からこうしたウイルスを人間社会に到来させていると考えているようです。本来ならば接触しないはずのものが接触するようになってしまったことによる悲劇です。


ホット・ゾーン――「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々
ホット・ゾーン――「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々
リチャード・プレストン 高見浩

関連商品
ウイルスと感染のしくみ なぜ感染し、増殖するのか、その驚くべきナゾに迫る!! (サイエンス・アイ新書)
フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち
殺人ウイルスの謎に迫る! 新型インフルエンザはどうして危険なのか? 致死率80%以上の凶悪ウイルスとはなにか? (サイエンス・アイ新書)
How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント
アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極 (集英社文庫)
by G-Tools


« スタンフォードの自分を変える教室 | トップページ | スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? »

ノンフィクション」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« スタンフォードの自分を変える教室 | トップページ | スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? »