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2014年7月29日

FBI美術捜査官

◇◆第870回◆◇

4760139966FBI美術捜査官―奪われた名画を追え
ロバート・K. ウィットマン ジョン シフマン Robert K. Wittman
柏書房 2011-06

by G-Tools

人類の財産を取り戻す
盗まれた芸術品を取り戻すべくFBIの潜入捜査官として活躍した著者の回顧録。美術犯罪に関して著者は、犯人を逮捕することよりも大事なことが、美術品を無事取り返すことだ、と書いています。原題の”PRICELESS”が示すようにそれらは芸術的、歴史的に唯一無二の人類の財産です。FBIであっても美術犯罪は、麻薬や殺人といったものよりも軽んじられがちでした。しかし、著者は「人類の財産を守る」ということに心からやりがいを感じ、潜入捜査官として数々の事件を解決しています。

盗難美術品は闇市場で公の価格の10%ほどで流通します。美術犯罪捜査にとって、作品を取り戻し、犯人を捕まえることができるチャンスは、犯人が美術品を売って換金しようとするときです。有名な作品ほど売るのは難しく、盗難から時間がたつほどに、犯人は早くその品物を厄介払いしたいと考え、あせって買い手を求めようとします。そこにつけこむのが闇のブローカーに扮した潜入捜査官なのです。

国境を越えた犯罪捜査
闇市場は国境を越えて広がっています。リオデジャネイロでノーマン・ロックウェルを、デンマークでレンブラントを取り戻します。潜入捜査の様子が細かく描かれ、そのスリリングな展開に引き込まれます。相手は芸術愛好者などではなく、ただ強欲な犯罪者だと著者は書いています。その強欲につけこんで逮捕するのです。

美術館から芸術品を強奪するという類の犯罪だけでなく、美術品鑑定を逆手にとった専門家の詐欺事件もいくつか出てきます。また、ネイティブアメリカンの芸術品や各地の民俗芸術品を不当に横流しする組織的犯罪摘発の例も出てきます。”PRICELESS”という原題は、鑑定と美術品との切ってもきれない関係を示しています。芸術品に価値があるかどうか、本物かどうかを決めるのに「鑑定」は欠かせません。だから、それを利用した詐欺も横行するのです。

著者はアメリカ人の父と日本人の母をもつ日米の混血です。潜入捜査のあいまに彼自身の半生を記した部分も挿入されています。家族のこと、事故で友人を死なせてしまったこと、それらの記述が、この捜査官の人間的な部分を感じさせ、実録捜査物以上の厚みを本書に与えています。


FBI美術捜査官―奪われた名画を追え
FBI美術捜査官―奪われた名画を追え
ロバート・K. ウィットマン ジョン シフマン Robert K. Wittman

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