« 盛大な人生 | トップページ | 日本のロングトレイル »

2014年3月23日

浅田真央、16歳

◇◆第846回◆◇

4163696407浅田真央、16歳
宇都宮 直子
文藝春秋 2007-09

by G-Tools

06-07シーズンの浅田真央
この年の春、彼女は中京高校に入学。前年の活躍からすでに全国的に名を知られ、TV番組やCMなどさまざまな場面に登場するようになります。ホームリンクに大勢の人が押し寄せ、練習もままならなくなったため、育った名古屋のリンクを離れ、アメリカのレイクアローヘッドに練習拠点を移し新しいシーズンに備えます。コーチにとって夢のような才能を持つ彼女を山田コーチがあえて手放したのは、こうした背景に加え、彼女にさらに広い経験を積んで、大きく羽ばたいて欲しい、と願ったからでした。

このシーズン、彼女が出た競技会とエキシビションの一覧が巻末に載っています。フィギュアスケートの競技会シーズンは毎年10月に始まり、翌年3月の世界選手権で締めくくりとなります。このシーズンも彼女は出た六つの競技会すべてで表彰台に立ち、うち三つでは優勝しています。快進撃は続いているのですが、本書ではその裏にあったケガ、不調といったものも描いています。

二番目に出たスケートアメリカでは、SPで首位に立ちながら、フリーでジャンプミスを重ねて、三位に終わります。これをお母さんは「最低の試合」として、「勝ち負けだけが大事だとは思わないが、勝てるかもしれない試合を自分から捨てることは許されないこと」と言います。これと同様のことが、サンクトペテルブルグでおこなわれたグランプリファイナルでも繰り返されます。SPでは首位になりながら、フリーは大きく崩れて四位。総合では二位になったものの許される結果ではありませんでした。

お母さんは言います。「あの試合は中途半端で、恥ずかしかった。スケーターとしても恥ずかしい。あんな投げたような試合をして」。さらに続けて、「今日はどうしたの? どうしてきちんと最後までやらないの? 何のために一生懸命練習してきたの? なんで試合を諦めてしまうの? お前は、練習してきた長い時間を自分で捨ててしまったんだよ」。

東京の世界選手権では逆のことが起こります。SPで大きなミスをして五位のスタート。ショックのあまり呆然としてホテルに戻ってきた彼女を、お母さんは叱咤します。こういうとき彼女を褒めてはならないのです。優しいあたりさわりのない言葉は浅田真央を傷つけます。誰からも責められないと、さらに気持ちが落ち込むというのです。本人の性格を知り尽くしている肉親ならではの言葉です。

ソチのSPで16位と絶望的に出遅れたとき、お姉さんの舞さんは、彼女をあえて電話で叱ったと言っていました。お母さんの代わりをなさったのでしょう。叱られたことが彼女の闘争心に火をつけて、奇跡のようなフリーの演技を呼び込んだ一因になったのかもしれません。

2007年の世界選手権、浅田真央はフリーで難しいプログラムの「チャルダッシュ」を滑りきり、フリーでは一位になります。結果的には安藤美姫に僅差で敗れて二位となりますが、最後まであきらめない姿勢でつかんだ二位、どこかソチのフリーを思わせます。

15歳から16歳へ、少しずつ大人になっていく彼女の様子を、近しい視点から描く筆者の文章は暖かく、読んでいてほっとします。
---彼女は徹底した負けず嫌いだ。弱気に繋がるような発言はしないし、弱みを見せたがらない。ただ、最近は語彙が驚くほど増え、何気ない会話の中にも、柔らかな、裸の感情が透けて見えるようになっている。


浅田真央、16歳
浅田真央、16歳
宇都宮 直子

関連商品
浅田真央、17歳
浅田真央、18歳
浅田真央、20歳への階段
浅田真央 さらなる高みへ
浅田真央 夢の軌跡~ドリームのきせき~
by G-Tools

« 盛大な人生 | トップページ | 日本のロングトレイル »

浅田真央」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 盛大な人生 | トップページ | 日本のロングトレイル »