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2013年11月28日

ぼくは「しんかい6500」のパイロット

◇◆第833回◆◇

4875592760ぼくは「しんかい6500」のパイロット (私の大学テキスト版)
吉梅剛
こぶし書房 2013-07-10

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「しんかい6500」はどのように運航されるのか
著者は深海潜水調査船「しんかい6500」のパイロットです。六千メートル以上の深海に潜水できる有人調査船は世界でも数台しかなく、そのうちの一台が1991年に就航した日本の「しんかい6500」です。調査船には操縦士(パイロット)、副操縦士(コパイロット)、研究者(オブザーバー)の三名が乗り組み、深海を目指します。「しんかい6500」には「支援母船よこすか」がついており、潜水海域まではこの母船に載せられて移動します。現役パイロットの目線から、「しんかい6500」がどのように活動しているのかが具体的に記されています。

著者は広島県因島生まれ、弓削商船高等専門学校卒業後、ふとした偶然で海洋科学技術センター(現・海洋研究開発機構)に就職し、深海潜水調査船の航海士になっていきます。最新鋭の深海潜水調査船とはいえ、細かな操縦には人の繊細な感性と技が必要です。それらのことが本書を読むとよくわかります。無人潜水調査船もさまざまな調査をしていますが、やはり有人でなければ得られないものがまだまだたくさんあり、それが「しんかい6500」運航の意義でしょう。

深海有人調査船の現在と未来
「しんかい6500」は浮くように作られています。そのため、深海に赴くときはウエイトを積み、その重みで沈むようにしています。海上におろされた「しんかい6500」のバラストタンクには空気が一杯で、ここに徐々に水をいれ、下降を始めます。水深6500mの海底に潜るためには往復で5時間かかります。

海底近くなると、ウエイトを半分切り離し、浮上も下降もしない状態にします。その後、下降スラスタで海底まで下降し、補助タンク内に注水して着底します。浮上するときは、補助タンク内を排水し、ウエイトをすべて切り離し、自然の浮力によって海面に戻る仕組みになっているのです。

深海の水圧は想像を絶するものがあり、そのため、整備点検は厳密に行う必要があります。ほんのわずかでも水が漏れていたら、それが命取りになる可能性があるからです。著者が三菱重工業で現地の工員とともに整備点検作業をしている様子も記されています。

深海では予測できないものに出会います。生物のことも記されていますが、驚くのはポリ袋が大量に集まってポリ袋の墓場を作っているところや、マネキンの頭が転がっているなどというところです。また、海底の熱水鉱床(チムニー)やユノハナガニ、シロウリガイなどの様子も記されています。

1991年に就航した「しんかい6500」は、その後、数々の改良がなされ、これからもさらに改良が進むはずです。これからどういう改良がなされるのかについて著者は、それは研究者の要望によるものが大きいと書いています。研究者が何を求めて「しんかい6500」に乗るかによって、「しんかい6500」の進化の方向が決まっていきます。現在では、より広い視野を求めてアクリルやガラスのような透明の素材で深海潜水調査船が作られる可能性も生まれています。


ぼくは「しんかい6500」のパイロット (私の大学テキスト版)
ぼくは「しんかい6500」のパイロット (私の大学テキスト版)
吉梅剛

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