« 深海探検 | トップページ | 海洋資源大国めざす日本プロジェクト! »

2013年10月31日

クロネコの恩返し

◇◆第828回◆◇

482222385Xクロネコの恩返し
日経BPビジョナリー経営研究所
日経BP社 2013-09-12

by G-Tools

民間ならではのスピードと柔軟性のある寄付
「クロネコヤマトの宅急便」のヤマトグループは、東日本大震災の後、宅急便1個につき10円を寄付すると決め、一年間で140億円を被災地に寄付しました。純利益の4割というその寄付総額の大きさもさることながら、寄付を個人ではなく法人や団体にあて、利用の仕方に自由裁量を認めました。また、寄付にあたって財務省と折衝し、寄付金を非課税とすることによって、寄付金の全額を被災地が利用できるようにしたというのも画期的なことでした。

ヤマトグループがこのような寄付を行おうと考えた第一の理由は、東北地方の漁業、農業産物が同社のクール宅急便を育てる原動力になってくれたからでした。震災後、現地を見た社長が即座に寄付を決めています。寄付の方法も、今あるお金を出すというのではなく、宅急便の利用者全員が寄付に参加するという形をとり、宅急便1個につき10円としたのでした。

国や日本赤十字社からの補助金や義捐金が個人を対象とするのに対し、対象を法人や団体に絞ったのも特徴です。今回のような大震災では、社会基盤を構成する職場、病院、学校といった組織も大きな被害を受けています。これらが復旧しない限り、そこで暮らす人々はもとの暮らしに戻れません。さらにこれらの復旧はスピードが必要です。遅れると、組織そのものの命脈が尽きてしまうからです。

寄付に経営の考え方を入れる
全体を見て、最も効果的だと思われるところに集中的に寄付金を入れていく。寄付に経営の視点を持ち込みました。お金を活かす使い方をする、企業経営での投資と同じ考え方です。税金を使う国や地方自治体、一般の募金を使う公的な寄付ではこういうことはできません。広く浅く平等にという原則があるからです。ヤマトグループは、そうした公的な寄付金では補えない場所に、民間企業ならではのスピードと柔軟性と集中をもって、寄付金を配っていきました。公を補う民の力を示したのです。

寄付金を利用した団体はさまざまです。水産加工場、港、道の駅、水耕栽培工場、保育園、学校、総合病院、といった具体的な事例が当事者の声とあわせて報告されています。それらの誰もが声をそろえるのが、柔軟な利用を認めていただいて本当にありがたかったということでした。公的機関の補助金では、細かく利用規定が決まっています。また、税金を使う以上、そうでなくてはなりません。恣意的に流用されることを防ぐためにそうした規定があるのですが、それが柔軟な運用を阻害して、思うように利用できない、というジレンマに陥ることが珍しくありません。ヤマトグループの寄付金はそうした隙間を埋める役割をしました。それによって全体がうまくまわり、結果的にすべてのお金が活きたのです。

企業の寄付のあり方に先鞭をつけた
ヤマトグループの今回の寄付金の方法は、日本における今後の民間企業の寄付の方法にひとつの道を切り開いたともいえます。これまでの寄付金は日本赤十字社などに寄付して、そこで分配してもらうという形をとるしかありませんでした。しかし、今回のような方式が可能との先例ができたことによって、今後、大規模な災害が起きた場合、民間ならではのスピードと柔軟性を活かして、公的な補助金、寄付金では手が届かないところへ手を差し伸べ、企業の顔が見える寄付ができるようになるのではないでしょうか。

宅急便によって、宅配便という市場を作ったヤマトグループが、民間企業の寄付のあり方についても素晴らしい先例をつくった、その報告書です。


クロネコの恩返し
クロネコの恩返し
日経BPビジョナリー経営研究所

関連商品
クロネコヤマト「感動する企業」の秘密 (PHPビジネス新書)
未来の市場を創り出す ― 「サービスが先、利益は後」がめざすこと (日経ビジネス経営教室)
週刊 東洋経済 2013年 9/28号 [雑誌]
どん底から生まれた宅急便
クロネコヤマト「個を生かす」仕事論: “伸び続ける集団”の「発想・行動・信念」
by G-Tools

« 深海探検 | トップページ | 海洋資源大国めざす日本プロジェクト! »

ビジネス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 深海探検 | トップページ | 海洋資源大国めざす日本プロジェクト! »