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2013年3月16日

日本型「無私」の経営力

◇◆第794回◆◇

4334037135日本型「無私」の経営力 震災復興に挑む七つの現場 (光文社新書)
グロービス経営大学院 田久保 善彦
光文社 2012-11-16

by G-Tools

大震災に直面した七つの現場の行動
東日本大震災のとき、多くの企業が国内外から賞賛を浴びる活動をしました。本書では、それらの内から、荷物一個につき10円で計140億円を寄付したヤマトホールディングス、津波を被った写真を洗浄する活動を行った富士フイルム、NPOと連携して地域へクラウド・システムを構築した富士通、本人確認ができなくても預金を払い戻すことを真っ先に決断した東邦銀行、バスで住民を避難させ、ホテルを避難所として開放したみちのりホールディングスなど七つの企業の事例を紹介しています。

津波と原発事故という未曾有の災害を前これらの企業ではなぜこのような活動が可能であったのか、を経営という切り口で分析しています。素晴らしい経営は災害時にあっても素晴らしい力を発揮する組織を作り上げるのです。紹介されている企業は国際的にも名の通った大企業から地方のお醤油屋さんまで大小さまざまです。しかし、それらに共通しているのは、その企業が育ててもらった地域、職種、業態を通じて迅速な支援を行ったということです。

ヤマトは「荷物を運ぶこと」を中心に支援を展開し、救援物資の輸送にも大きな力となりました。富士フイルムは写真洗浄の技術を迅速に被災者に届け、すべてを失っていた人たちの「思い出」を救い力づけました。富士通はクラウド・システムを提供し、被災地の現場情報の集計・共有など情報を通じての支援に大きな力を発揮しました。東邦銀行は銀行として、みちのりホールディングスは公共交通機関としてできる最大のことは何かを考え行動を起こしています。

日本社会のモラルの高さ
これらの企業に共通するのは、現場と経営陣の連携がよくとれ、柔軟な意思決定の仕組みがあったこと、リーダーの決断が迅速であったこと、まず困難に直面しているお客様のことを第一に考えたことです。東邦銀行では、通帳を持っていない人にも払い戻しをする決断をどこよりも早くおこないました。『事故よりもお客様のことを優先し、払い戻しに対応する』という頭取のメッセージが現場に向けて素早く出されたといいます。その結果、事故は一件もおこりませんでした。あらためて日本人のモラルの高さというものに感心します。

ここに取り上げられている企業だけでなく、多くの企業が素晴らしい対応をしたでしょう。震災後、海外からは日本社会の治安の良さ、日本人の冷静さ、モラルの高さが賞賛されました。鶏が先か卵が先か、治安がいいから冷静に行動でき、社会を信頼でき、モラルが高いからお互いに助け合い、治安がよくなりさらにモラルが高くなる…、そういうことではないでしょうか。

日本では「だから日本の○○はダメなんだ」という言葉がメディアによく登場します。しかし、本書を読むと日本人も日本企業も日本社会もまだまだ捨てたものではない、と思います。


日本型「無私」の経営力 震災復興に挑む七つの現場 (光文社新書)
日本型「無私」の経営力 震災復興に挑む七つの現場 (光文社新書)
グロービス経営大学院 田久保 善彦

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