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2013年3月 8日

絵筆のいらない絵画教室

◇◆第793回◆◇

4314008814絵筆のいらない絵画教室
布施 英利
紀伊國屋書店 2000-11

by G-Tools

優れた画家は自然に学ぶ
著者は東京藝術大学美術学部を卒業し、同大学院で芸術学の博士課程を修めた美術評論家です。NHKの『ようこそ先輩』で母校の小学校を訪れ、六年生に魚の絵を描く授業をしました。その番組の内容が本書のベースになっています。どうすればよりよい絵が描けるのかということについての彼の持論は「自然に学ぶ、自然をよく観察する」ということです。理論編と実践編にわけてさまざまな例をあげながらわかりやすく書いてあります。

自然に学ぶ、というのは著者が尊敬するレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉に触発されたものです。「ダメな画家は画家に学ぶ、優れた画家は自然に学ぶ」、ダ・ヴィンチはこういう言葉を残しています。絵を描くことのトレーニングを他の画家の真似をすることに費やしてはならない、自然を師として、ものを見る目を養っていかなければならない、というのです。

自然を見るということは、ただ漫然と見ることではありません。授業では魚の絵を描くために魚を釣り、解剖までしています。くわしくつぶさに観察すること、身体全体、感性のすべてを使って対象を感じることです。

外側の世界を観察し内側の世界を感じる
ダ・ヴィンチの絵はものを徹底的に観察して得られたものを元にして描かれた絵です。怜悧な設計図のような絵である、と著者は書いています。一方、それとは対照的に見えるピカソの絵についても取り上げています。ピカソの絵は一見でたらめで子どものもののように見えます。しかし、子どもにはあのような絵は描けません。

ピカソが子どものころから天才的なデッサン力の持ち主であったことはよく知られています。本書ではもうひとり、後に偉大な画家となった少年が10歳のころに描いたデッサンが載せられています。光と影を忠実に描き、ものの形を正しくとらえた端正なデッサン、それはゴッホのものでした。ゴッホも晩年に描いた有名な絵の数々では一見稚拙ともとられかねない描き方をしています。

ピカソもゴッホもデッサン力が無かったわけではありません。それでもああいう絵を描いたのは、彼らは外に見えた世界を描いたのではなく、自分の内側にある世界と外側の世界との接点、内と外の世界をすり合わせることによって生まれたものを描いたのです。

著者は子どものときにしておくべきことは、二つあると書いています。ひとつはデッサン力をつけるために見たものを見たように描くこと。もうひとつは絵筆をおいて自然の中に入り、それを通じて自分のこころをつかむ訓練をすることです。これは将来画家になるつもりがなくても大事なことです。自分の外の世界をしっかり見て観察する力がつき、自身の内側を感じる力も育まれます。


絵筆のいらない絵画教室
絵筆のいらない絵画教室
布施 英利

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