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2013年2月10日

レスポンシブル・カンパニー

◇◆第788回◆◇

4478017921レスポンシブル・カンパニー
イヴォン・シュイナード ヴィンセント・スタンリー 井口 耕二
ダイヤモンド社 2012-12-07

by G-Tools

環境フレンドリーな企業への歩み
パタゴニアは世界有数のアウトドアウエアのメーカーであり、環境意識の高い企業としても知られています。「パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは」と表紙にあるように、パタゴニアがどのようにして現在のような企業になったのか、がわかりやすく述べられています。

パタゴニアの前身は創業者のイヴォン・シュイナードが立ち上げたシュイナード・イクイップメントです。高品質なクライミング用品を作っていましたが、ほとんど儲けがありませんでした。そこで衣料品を扱う部門を創業したのです。クライミング用品は生死にかかわる製品ですが、衣料品はそうではありません。求められる基準が全く違います。

「ぬるま湯につかって濡れ手で粟の利益をあげ、シュイナード・イクイップメントを黒字にする」という目的で作られたのがパタゴニアであり、現在一般的に認識されているような「リスクを取って環境問題を追求する先進的な企業」であろうとして始められたわけではありません。それが、現在のような形に進んでいったのは、目の前に現れた課題に対して著者らがその都度ごまかさずに取り組んできたからです。

環境に配慮すれば利益もついてくる
たとえば、会社がごく小規模だった時代から社内に託児所を設けています。このことによって社員は働きやすくなり、定着率があがりました。また、工業的に栽培されるコットンに莫大な農薬が投与され、栽培者も周辺の環境も汚染しているということを知って、わずか18ヶ月で全量をオーガニックコットン切り替えました。さらに、廃棄物を減らすことを目標にリサイクル素材から作ったフリースやカタログ用紙を他社に先駆けて使い始めました。

単にパタゴニアの方法が環境に優しいというだけならば、恐らくダイヤモンド社から本書が出版されることはなかったでしょう。特筆すべきは、環境に優しい、従業員が働きやすい経営を行えば、利益もまたついてくるということです。パタゴニアの製品は機能的に優れており、長持ちするというのが定評になっています。儲けのために品質をおろそかにしてはいない、ということが消費者に広く伝わっているためにパタゴニアの製品は少し値段が高くても選ばれるのです。

また、さまざまな部分のムダを省くことによってコストを大幅に削減しています。本書には、世界最大のディスカウントストアであるウォルマートがパタゴニアに環境対策の教えを請うたエピソードが載っています。安ければいいという姿勢で環境は二の次にしていたウォルマートが、そのためにさまざまな訴訟を起こされ、切羽詰ってまず環境に優しいポーズをとってみようとしたのです。その結果、驚くほど経費が削減されました。そして、いまやウォルマートは環境負荷の削減に本腰を入れています。

消費者の変化
今は環境意識の高い消費者が増加しています。あらゆるものがつながっており、自分の買った製品がどのような資源からどのような生産・流通過程をへて自分の手元に届くのかに注意を払う人が多いですし、少しでも環境負荷の少ない製品を買い、積極的にリサイクルをおこないたいと思っている人も多い。自分の儲けのためなら生態系を破壊してもかまわないと思っている人はどんどん減っています。

消費者と直接的にかかわりあうフロントラインの企業は、いまではすべて環境フレンドリーということを大きく掲げています。善玉でなければ生き残れなくなっているのです。さらに本書では、サプライチェーンを取り上げて、その中で企業が仕入先の工場や環境についても影響を及ぼすことができることを示しています。

貧しい国で搾取的な労働環境を経て作られたものを買いたいと思う人はいません。あるいは、環境に壊滅的な打撃を与えながら作られたものも同様です。そうした遠い国でおこなわれていることがこれまではあまり知られないままでした。しかし、インターネットの発展によって、今ではそこにつながる環境があれば誰でも状況を世界に向けて告発できるようになっています。

知り、努力し、共有する
本書の巻末にはチェックリストが掲載されており、自身の職場のチェックができるようになっています。これらすべてにチェックが入れられる企業などない、と著者が書いているように、これは努力目標にできる指標です。今何ができていて何がまだなのかをはっきりさせることから物事は始まります。経営者でないからできないということもありません。単なる一個人であっても身近な生活の中からできることはあります。そしてその一個人の姿勢が集まって社会を動かしていくのです。

第三章の終わりにダニエル・ゴールマンの『エコを選ぶ力―賢い消費者と透明な社会』からの言葉が引用されています。「自分の環境負荷を知る、改善を心がける、得た知識を共有する」、国や大企業から子どもまで応用できる考え方ではないでしょうか。


レスポンシブル・カンパニー
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イヴォン・シュイナード ヴィンセント・スタンリー 井口 耕二

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