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2012年12月15日

貧乏入門

◇◆第780回◆◇

4887597835貧乏入門
小池 龍之介
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2009-12-20

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貧乏入門というより清貧入門
著者は78年生まれの仏教の僧侶です。自身の経験と仏教の教えをベースにモノを集め所有すること、特に、必要でもないのに欲しいと思って(思わされて)買ってしまうことのメカニズムを解き明かし、そこから自由になって平安を手に入れるにはどうすればよいかということについて述べています。モノは少ない方がよいといっていますが、だからといって節約すればいいというものでもない、とも書いています。

心が散らかる
モノが少ない方がいいというのは、持ち物が増えると心の中が散らかるからです。人は自分の所有物というものを覚えていて、常に想起しています。何かをしていてもいつもそのことが、意識していなくとも心のどこかに湧き上がっては消えるということを繰り返しています。そういうことが繰り返されることによって心にノイズが増え、集中すべきことに集中できなくなります。

生活に必要なものはあります。衣食住を満たすものは揃える必要がありますが、それがほんとうに衣食住に必要なモノなのか考え直す必要があります。著者の場合、かつては衣類を大量に買ってはためこむことを繰り返していたといいます。何かを自分では使いきれないほど所有しているとしたら、これは度を越した所有です。そして常にそのモノの存在が心の一部を占有しています。この所有の状態について「つくづく心が乱れていた」と著者は書いています。

なぜ使い切れないほどのモノを溜め込むのか
ではなぜそのように大量のもの、使える範囲を超えるほどのものを所有してしまうのかというと、「私はこれこれのモノをこれだけ持っている(つもり)の人間です」ということによってアイデンティティを形成しているからです。だから、それを失ったり壊されたりすると強いショックを受けます。執着が強いものほどその度合いは大きくなります。

人は誰でもモノが大量にあって乱雑になっている場所に入ると嫌な気持ちになるものです。それは誰もが直感的に「持っていることはしんどいことだ」ということを知っているからです。それでもなお所有するモノを減らすことが難しいのは、それによってアイデンティティを形成していること、そういうモノを持っていることで「自分は価値のある人間だ」と錯覚できるという一面があります。

自己評価と他者からの評価を得るため
これを持っていることによって価値のある人間だと思いこむことは、裏返せばそれを持っていないとダメな人間だと思ってしまう面があるということです。広告はこの人間心理に取り入り、まず、素敵なキャラクターが何かを使っているところを見せます。そして、「あなたはこれをもっていないから不幸でしょう? ほらほら、これを持てばあなたもこの人のように幸せになれますよ」というイメージを作り上げ、私たちにモノを持たせようとします。

これは何も具体的なモノだけではありません。情報や人間関係といったものもその対象になります。私たちは程度の差はあれ、どこかで「これでいいのだろうか」という問いを自分に発しています。小さな不安という「苦」です。そこでただありのままの自分を自分自身で認めるのは非常に難しいため、それを持ち物によって支えようとするのです。それと同時に持ち物によって人からの評価も得ようとします。

持ち物が増えると不安が増え不安のスパイラルに陥る
ところが、持ち物が増えるとそれにともなって不安も増えます。何かが手に入れば今度はそれを失いはしないかと不安になります。そのためにいくらでも、もっともっととモノが欲しくなります。

ただし、著者はただ単に所有することを我慢して切り詰めることも勧めてはいません。所有したいという人間の願望の本質がどこにあるかということを見極めずただ我慢しても、それは恨みになり抑圧されたエネルギーとなって別のところに噴出してくるからです。欲望のありようを観察し、自分の心の動きを見つめる(この辺が仏教的なところです)ことなくして所有という強い欲望のエネルギーのコントロールから逃れることは難しいのです。


貧乏入門
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