« ディープピープル 青 | トップページ | 鳥あそび »

2012年2月29日

慢性疼痛

◇◆第733回◆◇

4480066446慢性疼痛: 「こじれた痛み」の不思議 (ちくま新書)
平木 英人
筑摩書房 2012-01-05

by G-Tools

心因性の慢性疼痛とは
本書で取り上げられているのは心因性の慢性疼痛です。痛みはつらい症状でありながら、どこまでも個人的なものです。心因性の慢性疼痛とは、1)通常の鎮痛剤が効かない、2)周囲に説明してもわかってもらえない独特の痛み方をする、3)医療機関で検査をしてもはっきりした異常がみつからない、あるいは完治したはずなのに痛みがいつまでも続く、という特徴を持っています。

著者は日本で心療内科として最も初期から治療を始めた慢性疼痛治療の第一人者です。作家の夏樹静子さんの腰痛治療をおこなった医師であり、その治療の様子も本書の中で触れられています。心因性という言葉に抵抗がある人が多く、夏樹さんもそうでした。「こんなひどい痛みが心なんていうつかみどころのないものによって起こるわけがない。どこかに肉体的な原因があるに違いない」、慢性疼痛で長年苦しむ人の多くがそう思い込んでいます。

心因性だからこそ痛みは無限大
しかし著者は、心というとらえどころのないものだからこそどんなひどい痛みでも生じうるし、痛みの程度に限りが無い、と述べています。心は無限なのです。心を誰もがもっている以上、誰もが心を病む可能性があります。本書には著者自身が学生時代に経験した心臓神経症(今ならパニック障害との病名がつくようです)のことが触れられています。それまで全くの健康体で、遊びまわっていた著者を突然その病が襲ったのです。

著者は森田療法と出会ったことによってパニック障害を脱することができました。森田療法とは日本で開発された心理療法です。東洋的な、禅のような感覚を大事にし、薬を使わず患者自身の内側からの力で治癒へと導きます。森田療法は「あるがまま」ということを大事にします。痛みがあっても、どきどきしても、それはそれとしてそれと共存しつつ今できることをやる、そういう感覚です。

あるがままに生きる
慢性疼痛とかパニック障害とか具体的な何かの不具合を抱えていなくても、こういう感覚は大事ではないかと思いました。現代人はすべてのことを「何とかできる」と思っているふしがあります。子育て、人間関係、健康づくり、キャリア構築etc...すべてのことにハウツーがあって、それをやれば成功する、みたいな考え方が主流を占めています。

しかし、実際の人生はそんな風には進みません。ままならない大きな流れの中に巻き込まれ、そこであえぎつつ生きていく、というのがこの世を生きるということの実情です。なんともならないものをコントロールしようという幻想にとらわれる、そのためにさらにいらぬ苦しみを背負っているような気がするのです。

心因性の慢性疼痛は心のとらわれによって起こります。何にとらわれるかによって起こり方は百人百通りですが、患者さんには共通点があります。それは「自分がこの世で一番苦しい思いをしている」と感じていることだ、と著者は指摘しています。疼痛にとらわれているために疼痛と格闘します。しかし、それは心が描き出した一種の幻影であるために、格闘すればするほどさらに手ごわいものになっていきます。

手放す、お任せする、そういう感覚が「あるがまま」ではないか、と思います。


慢性疼痛: 「こじれた痛み」の不思議 (ちくま新書)
慢性疼痛: 「こじれた痛み」の不思議 (ちくま新書)
平木 英人

関連商品
腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)
心療内科を訪ねて―心が痛み、心が治す (新潮文庫)
痛みをやわらげる科学 痛みの正体やその原因、最新の治療法までを探る (サイエンス・アイ新書)
森田療法のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)
正しく知る不安障害 ~不安を理解し怖れを手放す~ (ぐっと身近に人がわかる)
by G-Tools

« ディープピープル 青 | トップページ | 鳥あそび »

健康・暮らし」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ディープピープル 青 | トップページ | 鳥あそび »