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2011年5月 3日

油彩画超入門 光と影を描く

◇◆第712回◆◇

4062692708油彩画超入門 光と影を描く (The New Fifties)
中西 繁
講談社 2008-05-27

by G-Tools

自分なりの方法を編み出す
油絵の風景画で主に光と影をどのように描けばいいかについて説明されています。著者は大学で建築を学び、専門的な美術教育を受けた経験はありません。自分で創意工夫してこれらの描き方を身につけたと記しています。もともと絵とはそういうもので、正しい方法などというものはなく、その人がその人なりに模索して身につけていくものなのでしょう。私は油絵を描きませんが、それでも絵を描くことへの姿勢、考え方という点でいろいろ参考になりました。

PART4までは油絵の描き方に焦点があてられていますが、最後のPART5はどのような絵を描く場合でもアイデアとして活かせるのではないかと思います。この中で、風景画を描く時には「欲張ると散漫になるので思い切って画角を切り取る」と冒頭に書いています。また、写真を活用して描くことの効用についても述べられています。写真を使って描いてはいけないという画家は多いですが、それは実情とはかけはなれているようです。

写真を使う利点
写真を使うことによって時間を有効に使い、さまざまな題材を描くことができます。また動きの速いもの、夜や雨、朝焼けや夕焼けといった一瞬で光が変わるものなども写真に撮ればゆっくり描くことができます。著者はデジカメでたくさん撮影し、それをパソコンのモニターで見ながら描いています。プリントしたものより光を直接感じることができ、拡大も容易だからです。

私自身も写真を使って描きますので、著者の書いていることには同感しました。同時に、写真から風景画を描く時は「画角を切り取る」というのがポイントかもしれないと思います。通常の写真では、風景などは特に広角で撮影しがちです。しかし、人間の目はもっと集中して見ています。画角を狭くするために、望遠撮影を活用してもいいかもしれません。

いつでも描けるようにしておくことの重要性
「自分のアトリエを作る」ことの効用についても書かれています。油絵は乾燥に時間がかかり、いつでも描ける状態にして絵と絵具を出しておかないと描き続けることは難しいのです。そのため、部屋の片隅にでもいいからアトリエコーナーを設けなさいとアドバイスしています。ここを読んだとき、だから油絵や水彩画で私は描かないのだ、と自分の方法を振り返りました。

私はいま、オイルパステルとリキテックス・リキッドをミックスして使い、絵を描いています。ブログ『優嵐スケッチブック』をご参照ください。この方法の利点はいつでも始められ、中断も再開も容易というところにあります。オイルパステルはもともと画材が乾いていますから、乾かす手間も場所も不要です。リキテックス・リキッドは液状のアクリル絵具でインクのような速乾性があります。

紙だけでなく、最近ではキャンバスにも描いています。これらの方法ならF10程度の大きさまで難なく描けますから、もっと大きなサイズを描くことも十分可能だろうと思っています。ただし、そんな大きな絵を描いてどこに保管するのか、という問題が出てくるでしょうけれど。

見て描けば世界が広がる
あとがきで著者は、「絵を描くようになると世界が広がるはずだ。対象を隅々まで観察するので、それまで見えなかったものが見えてきたり、気づかなかったことに気づくことがある」と書いています。これは見て描くというタイプの絵を描くならどのような絵でもあてはまると思います。マンガのようなイラストでは期待できませんが。

これが効用だとしたら、それを最大限に生かすためには数を描く必要があります。いつでもどこでもいくらでもどんどん描く、毎日必ず描くのです。そのためには描きやすい画材を選ぶことは重要でしょう。


油彩画超入門 光と影を描く (The New Fifties)
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コメント

春さん、コメントいただきありがとうございます。

分野を問わず、いろいろ工夫されて自分なりの方法を編み出しておられる方の「方法論」は参考になりますね。それは安易なハウツーというのではなく、その基本にある考え方が活かせるからなんだと思います。そのまま真似するというのではなく、その考え方を学ぶとでもいいましょうか…。

風景画の描き方で身につけたことが、その後のマーケティングで役立ったという春さんのお話はまさにそれか、と思います。ビジネスマンは何か芸術関係のことをやると、意外にビジネスでのものの見方を学べるのではないか、と感じます。「3分でできるナントカ」なんていう本を読むより、多分ずっと役に立つ。

>その製品の売上高のうち何割が当初の狙い通りの顧客ターゲットに売れたか
なるほど。考えてみればそれはそうですよね。狙った対象にうまく売れたのでなければ、単にまぐれ、タナボタ、宝くじみたいなもので、次の戦略がたてられません。虻蜂取らずになると、衰亡への道は近いですよね。

優嵐さん、こんにちは〜♪
僕も風景画が大好きでした。「欲張ると散漫になるので思い切って画角を切り取る」が大切なことをそのときに学びました。色々欲張って描いて、先生の所に持って行くと「で、君はこの絵で何を描きたかったのかな?」と聞かれ、返答に窮したことを想い出します(苦笑)。絵を描くということは、何かをバッサリ捨てることなのだと学びました。
このことは後にマーケティングを仕事でやる際にもとても生きました。製品開発をする際に、誰に買って貰いたいのかをしっかり決めて絶対にそこからブラさない。結果確認は単純な売上高の大小で見るのではなく、その製品の売上高のうち何割が当初の狙い通りの顧客ターゲットに売れたか、を最も重視する。たとえ売上高が何十億円になろうとも、その売上高のうち狙った顧客の売上高分が7割を切ったら大失敗であると。分野は様々ですが、デパートなら伊勢丹、自動車ならホンダなど、そういうことを愚直にやっている企業は確実に生き残ってゆきますが、単に売上高が大きいから成功だ、小さいから失敗だ、という表面的な数字だけに囚われている多くの企業は惨敗しています。
これを訴えたいんだということ、そのために思い切って捨てる勇気を持つことは、様々な分野で大切なことなのだと学ぶこと多しです。

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