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2010年6月24日

MARK ROTHKO マーク・ロスコ

◇◆第668回◆◇

4473035778MARK ROTHKO
川村記念美術館
淡交社 2005-09-15

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<シーグラム壁画>瞑想する絵画
マーク・ロスコは20世紀アメリカを代表する抽象画家です。「瞑想する絵画」といわれるその画面は深い精神性をたたえています。本書は1958年から59年にかけてニューヨークのレストランを飾るために制作された<シーグラム壁画>を中心に、円熟期から晩年にいたる作品に関する論評、簡単な評伝などが収められています。<シーグラム壁画>は30点制作されたものの、結局ロスコがレストランとの契約を破棄したために散逸し、そのうち9点がロンドンのテート・ギャラリーに、7点が千葉県の川村記念美術館に収蔵されています。

本書はこの二つの美術館が協力して<シーグラム壁画>の展覧会を開催したのにあわせて出版されたものです。ロスコのこれらの作品はいずれも巨大なもので、図版で見るだけではその雰囲気を感じ取ることは難しいでしょう。しかし、ロスコの作品に触れ、彼の芸術について知るには格好の入門書だと思います。初期の具象画も一部収められていますが、やはり「カラーフィールドペインティング」と呼ばれる円熟期以降の作品が図版で見ても魅力的です。

日本人のものの見方について
自分が抽象絵画に興味を持つ日が来るなどとは想像もしていなかったのですが、近頃変わってきました。一度は川村記念美術館を訪れて実物に触れてみたいものだと思っています。生前のロスコと親交が深かった美術史家ドリュー・アシュトンと川村記念美術館の主任学芸員・林寿美との対談の次の言葉は興味深いものでした。

アシュトン:(前略)ふと思ったのですが、もしかしたらアジアの芸術に親しんだ人の方が、私たち西洋の人間よりもロスコを理解する素地があるのではないでしょうか。
:私も同じことを考えていました。私たち日本人には、西欧とは違う独自のものの見方、空間意識が培われています。
アシュトン:俳句という芸術がある文化、鴨が飛翔する姿を描いた屏風絵のある文化。あなたたちは、何も描かれていない屏風を見てもけっして不自然には思わず、そこに空間があることを知っている。西洋ではそれは普通ではない。人々は遠近法の消失点を探すことになれてしまっているのです。

西洋絵画、特に西洋建築の中で見るあの息詰まるような感覚を思い出し、ああ、そうだったのか、と思いました。空間認識の仕方が私たちとは違うのです。私たちは生まれた時から西洋的な文化と身近に接し、日本の伝統文化よりそちらの方に馴染みがあると思い込んでいますが、実は深いところでは感覚の差はまだまだ大きいのだと思います。むしろ、この差こそ日本人の財産かもしれません。

ずっと西欧文明に追いつけ追い越せできましたが、日本人は彼らが決して体得することができない独特の「何か」を持っています。それは風土や言語によって支えられ培われるものだけに、簡単には模倣できないものであり、日本人自身にもいまひとつ理解されていない「何か」ではないかと思います。このところ自分が興味を持つものの中にこうした伏線が見え隠れしているな、と感じ始めています。


MARK ROTHKO
MARK ROTHKO
川村記念美術館

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