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2010年2月 1日

方法序説

◇◆第642回◆◇

4000071807方法序説 (ワイド版岩波文庫)
ルネ・デカルト  谷川多佳子(訳)
岩波書店 2001-01

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近代精神確立の宣言書
「われ思う、ゆえにわれあり」という有名な言葉の出典です。近代精神の確立を告げ、今日の学問の基本的な準拠枠をなす新しい哲学の根本原理と方法が、ここに示される---とありますので、大層難しい大作かと構えてしまいますが、本文は100ページそこそこ、難解な文章ではなく、今風にいえば、考え方のハウツー本という感じです。正式な書名は「理性を正しく導き、学問において真理を探究するための 方法序説」です。

デカルトは本書を当時の知識階級が使っていたラテン語ではなく庶民階級が使ったフランス語で書き、すべての人が真理を見出すための参考にして欲しいと願ったようです。デカルトは1596年にフランスで法服貴族の子として生まれ、イエズス会系の名門校ラ・フレーシュ学院でスコラ哲学を学び、その後、ポワチエ大学で医学と法学を学び、法学士号を取得しています。

相克の時代を生きたデカルト
デカルトの生きた時代は旧来の学問や反宗教改革と新しい科学や哲学との激しい相克の時代でした。デカルトは自然科学全体を秩序立てて調べようとした『世界論』を執筆したものの、ガリレオが断罪されたことによって刊行を断念し、その代わりに三つの科学論文に『方法序説』を序文としてつけ、1637年に刊行しました。近代科学の揺籃期であり、その後、科学が大きく発展するにしたがって、彼の思索の方法が科学的思考の基礎とみなされたようです。

現代の科学技術の行き詰まり、人間疎外を指すときによく「デカルト=ニュートン的考え方」という言葉がきかれます。世界から意味をはぎとり、宇宙のすべてを命の無い自動機械としてとらえたとされる考え方です。ただ、ニュートンは敬虔なキリスト教徒であり、神の御業を知りたくてひたすら研究をおこなったといわれています。本書を読むと、デカルトもまた神の存在や魂の不死を理性的に考えており、本書の一部をさいてそのことに関する省察をおこなっています。

神や魂の存在証明
「われ思う、ゆえにわれあり」というのは、理性によってすべてを判断するとした宣言ではありますが、それによって神や魂を葬り去ったわけではないし、人間こそが至高の存在だと考えたわけでもないことがわかります。むしろ、自分という不完全な存在が完全なるものを認識できることが神から導かれるものであり、それゆえにそれが神と魂の不死性の存在証明だと第4部で述べています。

なぜ多くの人が神を認識することも自分たちの魂が何であるかを認識することも困難なのかということについて、デカルトは「自分の精神を感覚的な事物を越えて高めることが決してないからだ」と述べています。確かだと感覚的に認識していること、例えば自分の身体があるとか天体や地球があるということさえ、それが形而上学的確実性で論じられるとき、全面的には確信できないことになります。現実を感覚のままにとらえているだけでは幻から抜け出ることはできない、と彼は指摘しているのです。

方法序説 (岩波文庫)
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デカルト Ren´e Descartes

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