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2009年5月12日

影の現象学

◇◆第564回◆◇

4061588117影の現象学 (講談社学術文庫)
河合 隼雄
講談社 1987-12

by G-Tools

無意識のなかに潜む「影」とは何か
日本を代表するユング派心理学者が、無意識のなかでも特に「影」に的を絞ってわかりやすく書いたものです。影はすべての人間にあり、それは「もう一人の私」ともいうべき意識下の自分とみることができる、と著者は書いています。自分が気がついていないだけでなく、都合が悪いために忘れて意識下に押し込んでいる何か、という面も持っているようです。従って、しばしば意識を裏切ります。ある意味危険な存在でもあり、非常に魅惑的な存在でもあります。

時々、わけのわからない犯罪や、まさかあの人がというような人の奇矯なふるまいがメディアの話題をさらうことがあります。これらにも影が影響(影響とは”影の響き”と書くのですね)を与えているようです。人間のこころというものは本人には想像もつかない広がりと深さを持っているものであり、よく氷山に例えられますが、私たちが「自分のこころ」として意識できているのは、ごくわずかの部分でしかありません。

影の力
無差別殺人などが大きくとりあげられると、識者の見解がメディアに載り、教育の問題が指摘されたりします。しかし、本書を読むと、そんな意識的な皮相の手段ではとうていそういうものは防ぎきれないだろう、と感じます。なぜなら、そういう事態は、人からは意識できない影が凶暴な形で姿を現したものといえるからです。現代人は科学の発達によって、あらゆることがコントロールできるはずだ、と思い込むようになっていますが、それは幻想です。科学は目に見えることには大きな力を発揮しますが、そうでないものには意外に無力ではないでしょうか。

影は個人のみではなく、集団にもあります。ナチスドイツの所業がヨーロッパ文明の影、荒ぶる神オーディーンの出現として本書では述べられています。多くの社会的な狂気、魔女狩りとか、スターリニズムとか文化大革命とか、戦時中の日本の異常な事態とかは、社会の影の噴出と考えられます。後で振り返ると、その社会に属していた人でさえ、なぜあのようなことがおこったのかわからず、うまく説明もできず、何かにとりつかれていたような印象を受けるからです。

バランスをとる
本書を読むと、易経の陰陽を連想します。陽は陽の極にすでに陰を含み、陰は陰の極に陽を含む、すべては移り変わり流れ、そのバランスが大事であると易はいいます。あまりにも白すぎるものは黒を押さえつけており、やがて黒はなんらかの形をとって噴出してきます。個人としてもあまりに善人すぎたり、立派すぎるように見える人は影が濃く深くなる傾向があるようです。

そんなことをきくと、社会の中にある程度ダークな部分、アンダーグラウンド系の部分が存在するのはいたし方ないのかもしれない、と思います。それがいいか、悪いかではなく、どうしようもなく必要なものなのかもしれません。家族の中でも非常に立派な両親のもとに落伍者のような子が育つことがあります。これは両親の影の部分を、子どもが引き受ける形をとっているのです。

意識だけでできることは限られている
そう考えると、子育てのハウツーなんて随分薄っぺらいものだし、学校で教えられることなど蟷螂の斧だという気がします。それが無駄だといっているわけではありませんが、人間が意識的に考えて「こうしたら、こうなる」なんて思っていることは、実はお笑い種かもしれない、と考えている方が健全でしょう。笑いのもつ力、王のクソ真面目な力に対抗する道化の力、というものを本書でも取り上げています。

影は凶暴な力を持っており、不用意に対決することは危険でもあります。影が原因でさまざまな神経症や精神的な症状が出ている場合は、用心しつつ向かい合っていかなければなりませんが、ものごとには「時」があり、影との対決にもそれが必要だと著者は記しています。十分な強さがない場合、うかつに対決すると、こちらが滅ぼされかねないのです。

しかし、影には創造性という素晴らしい力もあります。善と悪、光と闇などさまざまな対立の中で、われわれ自身の「第三の道」を見出すことを、自らの力でやり抜いてゆくべきではなかろうか、と著者は本書の最後を結んでいます。

影の現象学 (講談社学術文庫)
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河合 隼雄

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