廃道をゆく
◇◆第512回◆◇
![]() | 廃道をゆく (イカロス・ムック) イカロス出版 2008-10-31 by G-Tools |
●近代化の過程で残された廃道を踏査する
人が暮らしている限りそこには道が存在します。ただ、明治維新以降、移動手段が急速に発達し、特にここ半世紀ほどで日本全国の道事情は大きく変りました。本書でとりあげられている「廃道」とは、主に明治以降の土木技術の発達の過程で新たに造られ、その後さまざまな事情で別のルートに道路としての機能を譲り、大多数の人から省みられなくなった道を意味しています。
著者たちはそうした忘れられた近代の道路の遺構を探し、実際に現地に足を運んで調査しています。中には江戸期に個人の意思と力でつけられた道というのもありますが、大半は明治以降のもので、高速道路の廃道まで紹介しています。明治以降の廃道の探索の面白さはそこにさまざまな近代化土木建築の遺構が残されていることでしょう。
江戸時代までは人、馬、駕籠、大八車程度のものしか道を通っていません。険しい山岳地帯が多い日本の国土では、大規模な物流は船を頼るしかありませんでした。それが、明治維新を経て、ときの政府が最も力を入れたのが鉄道と馬車が走れるような道路の整備だったのです。政府の肝いりで各地に隧道(トンネル)が掘られ橋が架けられました。
ところが、幸か不幸か、物流は飛躍的に増大し、土木技術もそれにともなって発達したために新しい道が次々に必要になりました。馬車しか通れない道ではお話にならず、すぐに車、バス、トラックへと需要が高まります。そのたびに道は拡張され、それができない場合には、トンネルや橋を用いて別のルートに新たな道を造っていきました。
●自然は素早く人工物を覆っていく
そんな過程が繰り返されたために全国各地に使われなくなった隧道、峠道などの「廃道」が大量に残されるようになったのです。これらはつい最近までほとんど省みられることがありませんでした。ようやく最近になって土木建築の近代化遺産として光があたりつつあります。本書には著者たちが身体をはって廃道の踏査をおこない、撮影したさまざまな遺構の写真が載せられています。
身体をはってというのは大げさではなく、ここにおさめられている写真をみると、道というのは使われなくなるとみるみるうちに荒廃し、自然の中に飲み込まれていってしまうものなのだということがよくわかります。ほんの半世紀前まで車が走っていた道路が完全に藪や湿地の中に消えてしまっているという例がいくつも載っています。
自然の力というのは人間の想像を超えるほど大きく、もし人類が滅びてしまったなら、数百年で人間の残した構造物は自然の中に埋もれてしまうだろうなと思わざるをえません。


コメント
はるさん、コメントいただきありがとうございます。いいクリスマスをお過ごしになったでしょうか?
道路をはじめとした交通インフラがその国の政治経済の状態を反映しているというのは確かだなと思います。
外国の人が日本に来ると、町並みが清潔とか道路がきれいとかいう印象を受ける人が多いようです。いくつかの先進国ではない国の道路を見た経験を思い出しても、日本人としては驚きが多かったですね。
もちろん外国人が入れるような地域はまだ整備が行き届いているところだと思うのですが、いくつかびっくりするようなことがありました。
アフリカでは、鉄道の線路の上で近所の人たちがバザーをやっていました。ネパールでは道路舗装がぼこぼこで、あちこちで故障やパンクで立ち往生したトラックやバスに会いました。ベリーズでは、乗っていた4WD車のリアウインドウに大石がぶつかって壊れてしまいました。道以前に、その国の国際空港に降り立っただけで、その国の状態がだいたい推察できますね。モスクワの空港にはびっくりしましたもの。
反射板の話、いかにも日本らしいなあと感じます。こういうかゆいところに手が届くような工夫やサービスが日本人は実にうまい。今の日本を代表する文化は何かと聞かれたら、コンビニへ案内する、と誰かが書いていましたが、あれも実に日本的な創意工夫に満ちています。素早い物流を可能にする通信、道路インフラ、コンピュータによる商品管理の結晶のひとつの姿でしょうから。
投稿: COX | 2008年12月26日 10:29
COXさん こんにちは〜♪
COXさんの久々の旅行&アドベンチャー関連本のご紹介。
実はこの手の本、僕も好きなんです。(^_^)v
アフリカ紀行の本なんかを読むと、「道路を見ると、その国の経済や政治や社会がどうなっているか全て分かる」んだそうです。なるほどな〜、と思いましたよ。
国内が社会不安や内戦なんかがあると、道路の補修が全くできなくなって、道路という道路がボロボロになって行きます。
別に必死に調査なんかしなくっても、現地に行って道路がどれだけしっかりメンテされているか、どれだけ荒廃しているかを見るだけで全てが分かっちゃうんですね。
独裁国家なんかは、人目につく道路は途轍もなく綺麗ですが、一歩外れると目も当てられないような惨状だったりします。
先進国中に広まった、道路によくある「反射板」、これは日本人の発明だそうです。たぶん反射板がいちばん多いのは日本なのだと思います。
中央分離帯にLEDライトを配備したり、「どこそこまで約何分」と表示するような国も日本ぐらいだそうです。
日本に住んでいると、日本の経済や政治はホントになっちょらんな〜と思いますが、世界的に見ると相対的にはトップレベルであることは間違いなさそうですね〜。
僕の住んでいる鵠沼は100年前から都心部の支配層の別荘地や保養地として発達した街ですが、当時はあぜ道だったので、いまだに車がすれ違うのに苦労する狭い道ばかりです。車の運転には苦労しますが、狭い道もディメリットばかりではなくって、誰も抜け道として利用しないとか、道が狭すぎて車速が20km以上では走れないため、案外静かな環境が保たれていたりして、甲乙相半ばするという感じです。
道というテーマでいろいろ調べるのも案外たくさん新しい発見がありそうですね。
ともあれCOXさんにメリークリスマス!(^_-)-☆
投稿: はる | 2008年12月26日 00:00