« あなたはなぜあの人の「におい」に魅かれるのか | トップページ | 環境危機をあおってはいけない »

2008年7月 9日

生ける宇宙

◇◆第483回◆◇

4531081633生ける宇宙―科学による万物の一貫性の発見
アーヴィン・ラズロ 吉田 三知世(訳)
日本教文社 2008-02

by G-Tools

宇宙と万物に関する新たな思考の枠組み
アーヴィン・ラズロはアカシック・フィールド(量子真空)という概念を用いて、宇宙と万物に関する新たな思考の枠組みを示しています。人間は大昔から常にそうした大きな枠組みを求めており、創生神話はその典型でしょう。やがてそれが西洋ではキリスト教神学に取って代わられました。それらの枠組みにはいつも意味と目的がありました、近代の科学革命が起こるまでは。

宇宙には意味も目的もないか?
「神は死んだ」といわれたように、近代科学革命以後の宇宙はそれまでのものと異なり、冷たく死んだ物質が偶然にぶつかったり離れたりしてできた機械論的、物質主義的、還元主義的なイメージに満ちたものです。すべては偶然の産物であり、なんの意味も目的もなく、行き着く先はすべての崩壊である、という殺伐とした宇宙の姿が「科学的」として認められるようになったのです。

人間もそれと同様で、意識は脳細胞が生み出したものであり、個人は利己的遺伝子を運ぶ単なる乗り物にすぎない、というネオダーウィニズムに基づくなんとも無情な人間観が支配的になりました。現代人のほとんどがこうした宇宙観を多かれ少なかれ信じていると思います。しかし、現在の最先端科学の分野では、大きな枠組みの部分で機械論的な宇宙観では宇宙の姿を説明しきれないと考える科学者が増えているようです。

近代科学の生み出した宇宙観を問い直す
量子物理学、宇宙物理学、進化学などの進歩に伴っていろいろ奇妙な事実が明らかになっています。量子物理学の分野でいえば、一度関連を持った素粒子は、どれほど離れていても瞬時(光速より速い)に情報交換することが実験で証明されています。宇宙物理学では、この宇宙が我々の生存に関して考えられないほど精妙にあらゆる数字が調整されていることがわかっています。進化学でいえば、進化がまったく方向性もなくランダムに進んだのなら、地球誕生からわずか3億年ほどで生命が生まれるとは考えにくく、さらに人類にまで進むのは、確率的にありえないといいます。

モノがすべてなのか?
現在の主流の考え方では、「意識」は脳が生み出したもの、ということになっています。しかし、たんぱく質や脂肪、水といった本来意識を持たないとされているものから、いかにして「意識」が生まれてくるのでしょうか。脳が意識を生み出す、との確固たる証明もありません。すべてを物質的に考えるならそう考えるしかない、というのが実際のところではないでしょうか。

また、意識に関して、超常現象や幽霊その他、近代科学では説明しきれないものが報告され続けています。体外離脱や臨死体験、生まれ変わり、テレパシーといったものから、いわゆる直感、プラシーボ、祈りの効用、占いといったものまでさまざまです。近代科学はそれらを錯覚、まやかし、迷信、とひとくくりにしてきましたが、それだけでは説明困難な事例がたくさんあります。

まず意識がある
ラズロはこれらのこれまで主流とされてきた考え方から少し距離を置いて、先端の学問分野の成果をそれにあわせながら、全く新しい宇宙全体の枠組みを提示しています。モノから意識が生まれるのではなく、まず意識があるというのが彼の主張です。ずっと昔から神秘主義や秘儀の中で伝えられ、あらゆる霊的な天才たちはそれを悟っていました。しかし、科学的な手段で証明するすべがありませんでした。

ラズロは現在の宇宙を生み出したメタヴァースと呼ぶべきものが常に存在しており、そこから情報を得て新たな宇宙が誕生してくるのだ、としています。宇宙はつながりのない原子や分子がでたらめにぶつかっている場所ではなく、最初から一貫性がありひとつの統合された生物体のようなものであると述べています。それら宇宙のすべての情報を受け止め記録し続ける場所がアカシック・フィールド(量子真空)です。

科学的な枠組みというのはいつの時代も刷新されてきました。近代科学がニュートン力学によって地上の事象のほぼすべてを説明できるようになった後、アインシュタインの相対性理論が登場し、ニュートン力学の不備と不足を補いました。さらにそれから一世紀近くたち、今はニュートン-デカルト的宇宙観をもう一度裏返して見るべきときなのかもしれません。そしてその方が宇宙をうまく説明できるとしたら、天動説を地動説へと変えたような転換を受け入れることも大事だと思うのです。


生ける宇宙―科学による万物の一貫性の発見
生ける宇宙―科学による万物の一貫性の発見
アーヴィン ラズロ Ervin Laszlo

関連商品
叡知の海・宇宙―物質・生命・意識の統合理論をもとめて
フィールド 響き合う生命・意識・宇宙
CosMos コスモス
WorldShift
創造する真空(コスモス)―最先端物理学が明かす「第五の場」
by G-Tools

« あなたはなぜあの人の「におい」に魅かれるのか | トップページ | 環境危機をあおってはいけない »

哲学」カテゴリの記事

コメント

はるさん、コメントいただきありがとうございます。

人間は意味と目的を求める存在だと思います。
リチャード・ドーキンスなどがしつこく主張する
「人間は利己的遺伝子の乗り物」という説に納得できないものを
感じるのは、「それならば、これほどの高度な知性や感性を
持つ種を生み出す必要はなかったのでは?」と感じるからです。
単に生存していくだけならゴキブリの方がずっと容易でしょう。

ここまで高い意識を持つ種を宇宙が生み出したのは、それなりの
目的があったからじゃないか、と思います。そういう考え方を、
人間の意味や目的を科学に投影している邪道だという科学者も
いるようですが。

ただ、科学はまだ宇宙の姿の何ほどもとらえていないというのが
実情ではないかと私は思います。今から100年、200年先になった
とき、今の私たちが中世の異端裁判の話を聞くような奇妙さで
今の時代の物質主義的宇宙観が語られるような気もします。
「宇宙はモノからできていると思っていたんだって、へえ~、なんで
そんな変なこと考えたのかねえ」という具合にです。

僕も自分たち人類がどうやって進化してきたのか、人類を育んだ地球がどうやて生まれたのか、そして地球に生命を生む役割を演じた太陽がどうやって生まれたのか、そして太陽系を含む銀河系がどうやって生まれたのか、そして今の宇宙はどうやって生まれたのか?

自分のルーツは何なのか?という問いに対する答えは未だ得ていません。アインシュタインの相対性理論、量子力学、ひも理論がその糸口を与えてくれていますが、どれも完全なものではありません。

この地球、この人類が完全に唯物史観的に生まれたのであれば、地球になりそこねた惑星、人類になりそこねた生物がいる星は地球が1個に対して数百個のなり損ね惑星がなければなりません。このなり損ね惑星は今の宇宙天文学では観測不能です。

いったい地球という存在が、人類という存在が、極めて確率の低い中で途轍もない僥倖で生まれたものなのか、ある程度の必然により神の意志により生まれたものなのか、現在では知る由もありません。

「僕という自分はどの程度必然なのか、そしてどの程度偶然なのか、いったいどうやって生まれたのか」これは僕の人生の最大の課題であり続けると思います。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« あなたはなぜあの人の「におい」に魅かれるのか | トップページ | 環境危機をあおってはいけない »