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2008年7月23日

神話の力

◇◆第486回◆◇

4152035234神話の力
Joseph Campbell Bill Moyers 飛田 茂雄
早川書房 1992-07

by G-Tools

キャンベル神話学の入門書
世界中の神話には共通の骨組みとイメージがあり、重要な機能があることをあきらかにしたのがジョーゼフ・キャンベルです。彼の神話学の中心点は、「神話というのは魂の故郷であり、芸術に霊感を与え、詩を鼓吹する。人生を一遍の詩と観じ、自己をその詩の参与者と見なすこと、それが神話の機能である」、ということです。ビル・モイヤーズとのこの対談集の中でキャンベルは何度も様々な角度からそのことを語っています。

神話は人類の共通基盤に基づいたメタファー
神話には、ギリシャ・ローマ神話をはじめとするあらゆる民族の神話があげられますが、同時にキリスト教や仏教といった組織宗教の中に描かれているキリストやブッダの物語も含まれています。彼らの生涯の物語は事実を離れ、神話の機能を果たしています。それらに共通する枠組みがあるということは、意識するしないにかかわらず、自分を支えてくれる根本基盤、人類共通の精神の基盤とでもいうものがあるということです。それが神話の形をとり、あるときは聖者の、そして昨今では映画のヒーローの形をとったりするのです。

ジョージ・ルーカスがキャンベルの神話学に感銘を受け、「スター・ウォーズ」の参考にしたことはよく知られています。「スター・ウォーズ」は現代に蘇った神話なのです。ルーカスは神話を現代の言葉で現代人に納得できるように語りました。考えてみると、「ハリー・ポッター」なども神話的な要素を含んでいる気がします。人間の心の深い部分にある何かをわしづかみにするものをこれらのお話は持ちえたのです。

神話は隠喩である、とキャンベルは言います。真実に最も近いところの何かを語るものです。科学がどれほど発達しても究極の真実には到達できません。本当の神も真実の核心も人間には語ることができないものだからです。キリストやブッダが語る教えのほとんどがメタファーなのは、そのような形でしか普通の人々にそうしたものを示すことができないからでしょう。

英雄の旅は自己発見の旅
科学万能主義が席巻して久しい世に生きている大半の人にとって神話は、「なぜそんなギリシャの神々だのなんだのが必要なのか」ということになるでしょう。しかし、その「だのなんだの」の言葉にできない部分が私たちの心の深層に至る鍵を与えてくれる可能性があるのです。だからといって、神話の目的は理性を否定することではありません。

キャンベルは、神話に登場する英雄の旅の本質は、ただ勇気ある行動ではなく、自己発見であり、暗い情念を克服することによって内なる野蛮性を克服できるという人間の能力を象徴している、と言います。英雄は旅をし、他者を、社会を救うために何かを持ち帰るのです。

英雄は旅をし、竜を倒します。ここでの英雄はプロメテウスやスサノオに限ったものではありません。私たちひとりひとりが英雄であるとキャンベルは言います。私たちが魂の内なる竜を倒すための魂の高い冒険に出発する方法として、キャンベルは、自分の至福を追求することを勧めています。自分にとっての無上の喜びを見つけ、恐れずにそれについて行くことです。

至福を追求し運命を愛する
「英雄と違って、世界を救うのではなく、自分を救う旅にでかけるんですね」、というモイヤーズの問いかけに対し、キャンベルは、「しかし、そうすることによってあなたは世界を救うことになります。いきいきとした人間が世界に生気を与える。(中略)人々は物事を動かしたり、制度を変えたり、指導者を選んだり、そういうことで世界を救えると考えている。ノー、違うんです!必要なのは世界に生命をもたらすこと、そのためのただひとつの道は、自分自身にとっての生命のありかを見つけ、自分がいきいきと生きることです」、と返しています。

至福を追求するためには、自分が最も幸福に感じた時期へ心を向けること、何が自分を幸福にしたのかわかったら、誰がなんといおうとそれから離れないことが大事です。

一方、この世にはどうしようもない出来事もあります。ここでキャンベルは、ニーチェの「運命愛」という観念をたとえに、自分の運命を愛することで人生を転換させえる可能性を示しています。人生で生起するあらゆる偶然(人生のほとんどのことは偶然によって起こります)のうえに自分の意志を参加させることです。それらすべてをあたかも自分の意志であるかのように扱う。状況が困難だったり恐ろしいもの(強大な竜)であるほどそれを克服した者の人間像は偉大なものになります。

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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ジョーゼフ キャンベル ビル モイヤーズ Joseph Campbell

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