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2008年6月27日

はじまりの物語

◇◆第477回◆◇

4314010231はじまりの物語―デザインの視線
松田 行正
紀伊國屋書店 2007-04

by G-Tools

概念、形、方法のはじまりについて探る
発明や発見に関する物語は数多く書かれているが、「概念」、「形」、「方法(マニエラ)」などのはじまりについてのまとまった本はおそらくないだろう。---とまえがきに著者は記しています。本書はそれをテーマとしており、古今東西の絵画、文字、楽譜、設計図、オブジェ、写真などあらゆるものを縦横に駆使してイメージの源泉を訪ね求めています。思いがけないものの結びつきに驚き、人間の発想の自由さと不自由さを考えながら発見を楽しめる本です。

本全体の装丁にさまざまな工夫がこらされています。表紙のシミのような模様はロゼッタストーンの形を模しています。黄色という色にも意味があり、それらのことは本文で説明されています。小口には二つの図版が使われており、左右に傾けたときにおのおの違う絵が出てくる仕組みになっています。480点の図版を使ったオールカラー、さらに文字の組み方にも独自のこだわりがあります。

ここまで本のつくりにこだわったのは、本そのものがオブジェであることを本文の中で述べており、それをそのままこの本でもやってみせたということでしょう。文字そのものがいつかどこかの時点で生まれ、特に漢字の場合は象形文字であるために成り立ちのルーツをたどるおもしろさがあります。また、活版印刷術発明後、活字体のデザインもさまざまなものが生まれていきます。

●「地」と「図」の反転のくり返し
このように、何かが生まれるとそこから次の新しいものにつながって、それはどんどん変転をくり返していきます。「地」と「図」の反転と著者は呼んでいますが、かつて忌避された貶められていたものが、いつのまにか憧れの対象となって大流行したものの例として、ストライプがあげられています。

前著の『眼の冒険』でもナチスの用いたデザインの秘密についていくつか述べられていました。本書でも再びナチスやファシズム一般が利用したデザイン的特性をいくつかあげて解説しています。ハーケンクロイツは「螺旋」と関係しており、それが独特の象徴性を帯びてナチスへの心酔を呼び起こしました。ヒトラーはもともと画家を志しており、デザイン的に優れたものへの本能的な勘は鋭かったのかもしれません。

産業革命以後の芸術に大きな影響を与えたのは「列車」でした。これまで人類が経験したことのないような圧倒的なスピード感、直線的に風景を切り開いて進む線路、ダイヤグラム、路線図…。これほどでなくとも、すでにルネサンス期の絵画描写の歴然とした進歩は、レンズや鏡といった光学器械の発達と切り離せないという説も紹介しています。

人は何かを生み出して、その生み出したものから影響を受けてまた次の何かを生み出して、ということのくり返しで今まできたのであり、これからも人類が続く限りずっとそうなのでしょう。そして、それが次に何を生み出すことになるのかは、何かが生まれたその時点では想像も出来ない、というのもまたくり返された事実なのだと思います。


はじまりの物語―デザインの視線
はじまりの物語―デザインの視線
松田 行正

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