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2007年12月15日

ギフト 西のはての年代記 (1)

◇◆第430回◆◇

4309204643ギフト 西のはての年代記 (1)
アーシュラ・K. ル=グウィン Ursula K. Le Guin 谷垣 暁美
河出書房新社 2006-06-21

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強すぎるギフトのために目を封印された少年
物語の背景は”西のはて”と呼ばれる架空の地域です。ただ、内容を読むと、中世ヨーロッパ的な時代世界です。領主たちがお互いの領土と領民をおさめ、ときにはその間で小競り合いがあります。高地地方に住む領主の一族には”ギフト”と呼ばれるある種の超能力が血統を通じて伝わっており、この物語の主人公のオレックは”もどし”を持つカスプロ家の跡継ぎとして生まれました。

”もどし”は意志と視線の力によりあらゆるものを作られた以前の姿にもどすという力です。13歳になったオレックはいまだ自己のギフトを制御することができません。制御されないギフト(荒ぶるギフト)は大変危険であり、知らずにふるう力によって人を殺してしまいかねないところから、オレックは自ら目を封印することを父に頼みます。

超能力を持っているからといって、オレックの父やその他の一族の長たちが安楽に暮らしているわけではありません。領民の安寧をはかる苦労があり、ギフトを持つものは持たざるものには理解が難しい重荷を負っています。オレックの母はそうした能力を持たない低地人であり、聡明で優しくはあっても、オレックたちの悩みを基本的には理解することができません。

ギフトの持つ意味
ギフトはこの物語の中では超能力ですが、人に与えられたあらゆる能力と読み替えてみることもできます。ファンタジーというのは、こういう読み方ができるので、ものごとの本質を考えるには普通の小説よりもむしろ適しているという気がします。現実世界の制約や虚飾を拭い去って、核心へ読者を導いてくれるからです。

自分に与えられているギフトが何か、について考えてみることは人の成長にとって大事なことであろう、と思います。オレックの一族に伝わるギフトは「破壊と殺戮の能力」といってよく、それをオレックは嫌悪し、能力を発揮することを拒もうとします。ギフトについて、オレックの幼なじみであり、動物の心を読む能力がある少女グライは「前向きにも後ろ向きにも使えるのではないか」と語ります。

超能力は持っていないオレックの母ですが、低地人として、読み書きできる教育を受けており、オレックに物語や詩の素晴らしさを教えます。母から与えられたこの”ギフト”がある意味でオレックを救うことになるのですが、このあたりの物語展開は実に見事です。

ギフト (西のはての年代記 (1))
ギフト (西のはての年代記 (1))
アーシュラ・K. ル=グウィン Ursula K. Le Guin 谷垣 暁美

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