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2007年1月 9日

クラバート

◇◆第365回◆◇

4037261103クラバート
オトフリート=プロイスラー ヘルベルト=ホルツィング 中村 浩三
偕成社 1980-01

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真摯な、人間の生き方についての物語
孤児のクラバートはある日、水車小屋の見習いになるように誘われる夢を見ます。この水車小屋の親方は魔法使いで、邪悪な、さらに大きな力を持つものと結びついていることが、物語の中で明らかになってきます。このお話はドイツ東部からポーランド西南端のラウジッツ地方と呼ばれる地域に伝わる「クラバート伝説」を下敷きに描かれています。魔法や呪文などが登場しファンタジーの色合いも持っていますが、それ以上に真摯な人間の生き方についての物語です。

大人になってからの一時期、児童文学を集中的に読んだときがありました。児童文学の魅力は、物語がはっきりしていること、成長している人(子供)向けに書かれているため、お話が前向きであること、があげられます。大人向けであれば、どれほど退廃的で堕落して、善人が破滅して悪徳が栄えようとかまいませんし、何がなんだか話の筋があるのかないのか滅茶苦茶でもかまわないのですが、児童文学では、そういうことは許されないのです。

物語展開の巧みさと、背景の厚味
そのころにこの作品も初めて読み、感動しました。今回再読して、ラストシーンの素晴らしさを再確認するとともに、緊密な物語の構成、夢や伝説をたくみに取り入れて物語に変化をもたせながら最後までもっていくプロイスラーの物語手法に魅了されました。また、この地方の民俗やキリスト教の三大祭である復活祭、聖霊降臨祭、クリスマス、さらには大晦日と新年を物語の重要な展開の中に組み入れているところもすばらしいのです。

雪や雨、氷といった天候の描写、季節の移り変わりの描写も見事で、これらが物語に深みと厚みを与えています。ファンタジーの中には無国籍で、季節もさだかでない中でお話が展開していくものが時おり見受けられます。しかし、この物語はしっかりした土着性を持っており、それゆえにそこを基盤にファンタジーの翼を大きく広げることに成功しているように思えます。

最終的にクラバートは命ををかけて親方と対決することになるのですが、そこに至るまでの経過がこうした背景の中でしっかり描かれるからこそ、納得できる物語として心にしみいってきます。自由、友情、勇気、愛といった人間の存在基盤について、考える素材がこの物語の中に詰まっています。


クラバート
クラバート
オトフリート=プロイスラー ヘルベルト=ホルツィング

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