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2007年1月 7日

飛ぶ教室

◇◆第363回◆◇
飛ぶ教室
エーリヒ・ケストナー 高橋健二・訳  岩波書店 1962

ギムナジウムを舞台とした少年たちの物語
今から75年前に書かれたケストナーの児童文学の傑作です。いい題名だと思います。この作品は他に数人の訳者による翻訳が出ているようですが、私はほぼ半世紀前の高橋健二氏の訳文で楽しみました。ややクラシックな印象はありますが、それがかえって1930年ごろのドイツのギムナジウムの雰囲気にあっていて、いいのです。

本書の主人公たちはギムナジウムの高等科1年生です。ドイツの学制は日本と異なり10歳で将来の進路をおおまかに決め、大学へ行く予定の人はギムナジウムへ行くことになります。ここで10歳から19歳まで、だいたい日本の小学校高学年から高校までに相当する期間、教育を受けるようです。

ギムナジウムの数はそれほど多くなく、通学できないところに住んでいる生徒は寄宿舎に入ります。高等科1年生が実際には何歳なのか、は具体的に示されてはいませんが、中に描かれているイラストからすると、12~3歳くらいかと思われます。作者は彼らの悩み、夢、希望、家族との関係などを描き、それらに立ち向かう彼らの姿を描いていきます。

少年たちそれぞれの悩みと夢
親に捨てられ養子先から寄宿舎にきているヨーニー、彼は詩や創作が得意です。いつもお腹を空かせており、ボクサー志望だが書き取りは苦手なマチアス。貴族の息子だけれど、身体が小さくて勇気のないことを気に病んでいるウリー。自然科学に興味を持ち、いつも難しい本を読んでいるゼバスチアン。貧しい家の出身ですが、首席で正義感が強く、絵が得意なマルチン。

ギムナジウムと実業学校のいわばお約束といっていいような抗争や、上級生、先生とのさまざまなやりとり、彼らを暖かく見守る正義先生や禁煙先生という大人のキャラクターたちが登場します。クリスマスの物語と作者がわざわざ言っているように、クリスマスという時季を背景にしているからこそ、の盛り上がりが物語にありますが、ドイツのクリスマスを知らなくても十分物語の内容はわかります。

この物語を読んで映画『いまを生きる』や、『スタンド・バイ・ミー』を思い出しました。いずれも少年たちのお話で、それぞれに悩みや夢を抱えて生きています。最も強く打ち出されているのは、マルチンの貧しさゆえの悩みですが、これも時代背景ゆえか、と思います。しかし、時代の中で変らないもの、人と人とのつながり、勇気、思いやり、友情、そうしたものが描かれていることがこの物語に変らぬ魅力を与えています。


飛ぶ教室 (講談社文庫)
飛ぶ教室 (講談社文庫)
エーリッヒ ケストナー 桜井 誠

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