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2005年9月10日

クリティカル・パス

◇◆第118回◆◇

4826900848クリティカル・パス―人類の生存戦略と未来への選択
バックミンスター フラー R.Buckminster Fuller
白揚社 1998-11

by G-Tools

バックミンスター・フラーの考え方を知る
バックミンスター・フラーは先見的な建築家、技術者、哲学者でしたが、その枠にはおさまりきれない人でした。20世紀のレオナルド・ダヴィンチと呼ばれるように、ダイマクション・マップ、ダイマクション・ハウス、ジオテックドームをはじめ、数多くの発明に加え、「宇宙船地球号」「エコロジー」「生命圏(バイオスフィア)」「持続可能性」といった言葉を最初に使い、思想的にも大きな影響を与えてきました。

本書は本文だけで500ページを越す大著であり、また、フラーの独創的な考え方の背後にあるものから順次解き明かして述べてあるため、最初は「これはいったい何について書いてある本なのだろう?」という印象を受けます。人類史への考察から始まり、法律家資本主義と彼が呼ぶ現代社会の富の扱われ方の記述にいたるまで200ぺージが費やされています。

成長の限界説の否定
私にとっては第3部以降の「クリティカル・パス」、特にその1と2がフラーの思想を知るのには最も適切でした。フラーは本書の中で「成長の限界説」を否定しています。資源にも食料にもすべてのものには限りがある、という考え方が人々を争いに巻き込んでいる原因のひとつになっています。

フラーがこれを否定する根拠となっているのは科学技術の発達によるエフェメラリゼーション(短命化)とアクセラレーション(加速化)です。より少ない原料をより効率よく使い、軽く、早く、機能が向上した製品が日進月歩で作られています。これらのことをフラーは世界一周を例に説明しています。1520年の木造帆船が2年かかったのに対し、それから350年後の鋼鉄の蒸気船は2ヶ月、それから75年後のアルミ製の飛行機は2週間、さらに35年後の新型ロケットは1時間あまりで地球を一周します。

これらのことは生活すべてのうえに及び、20世紀の後半以降、私たちは19世紀以前の王侯貴族も享受できなかったような生活を全人口の60%以上が達成しているのです。さらに、フラーはリサイクルの一歩進んだ概念も提示しています。宇宙は常に再生産的であり、この世界から消滅してしまうものは何一つありません。人間が汚染と呼んでいるものも、人間にとって都合が悪いものであるからそう呼ばれているだけで、物質が循環していく過程としては同じことです。

汚染を汚染でなくし、人間の有用なものとして利用できるようにすることは科学技術の発達によって可能です。また、フラーは銅を例にとり、もはや地球上の鉱物資源を地中から掘り出す必要はなく、すでに世界中に出回っている製品をリサイクルしていくだけで、この先の鉱物需要はまかなっていけるようになる、といっています。再生技術が進む上、冶金学がさらに進歩して、さまざまな合金が作られ、もっと有用で使いやすく、より原料を使うことの少ない製品が次々と現れるのは間違いないからです。

フラーは人間が働かない方が、石油資源などの無駄遣いが減らせるのだから、直接人間の生命維持にかかわらないような仕事(書類を右から左へ流しているような仕事)に従事している人には補助金を出して家にいてもらった方が地球的観点からは望ましいともいっています。ここで「貪欲な法律家資本主義」の問題点があきらかになってきます。

大宇宙意識を持つ
すでに時代遅れであり、効率が悪く、富のいびつな集積にしか役立っていない主権国家というものを早く排除し、地球に浮いている島(ダイマクションマップでみると大陸は一続きのゆがみのない島として表されます)に住む地球人である、という「宇宙意識」を持つことが、大事だと彼はいうのです。

彼は時代を半世紀以上さきがけて見越していた天才でした。また多様な視点から、大局的にものごとを見ることができる目を持っていました。彼の発明はその時代の素材ではなく、次の時代の発明品によってようやく可能になるものが数多くあったようです。

彼は、自分の発明で大金を稼ぐといったことには関心がありませんでした。それよりも全人類に奉仕する方がずっと興味深いというのです。本書の「バックミンスター・フラーの自己規律」の中に「絶えず再考する神への誓い」という彼の「主への祈り」がのせられています。彼は○○教徒という偏狭な組織宗教の枠でゆがめられるような宗教概念を持ってはいません。常に再生統合化する宇宙神への絶対的な信心の徒であったといえるでしょう。



宇宙船地球号操縦マニュアル (ちくま学芸文庫)
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バックミンスター フラー Richard Buckminster Fuller

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