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2005年9月21日

もっといい会社、もっといい人生

◇◆第123回◆◇

4309242111もっといい会社、もっといい人生―新しい資本主義社会のかたち
チャールズ ハンディ Charles Handy
河出書房新社 1998-11

by G-Tools

資本主義は手段、何をするかは自分自身で決める
冷戦が終わった90年代初め、共産主義に勝利した資本主義の未来は輝かしいものに思えました。しかし、21世紀を迎えるころにはそのむき出しの暴力的ともいえる資本主義のパワーが、人々の生活の上にさまざまな問題をひきおこしていることがはっきりしてきました。本書は、これから私たちはどのような社会を目指すべきなのか、そしてもっと根本的には、どのような生き方を選択するべきなのかを考えさせてくれます。

著者のチャールズ・ハンディは”英国のピーター・ドラッカー”と称される経営学の大家です。資本主義は自由競争による富の追求を奨励する社会であり、それが持っている長所を認めながら、「資本主義はあくまで手段であり、何を目的にするのかは私たち自身が決めるべきである」とハンディは言います。このところを踏み外しているためにさまざまな問題が起きていることは明らかでしょう。

大きな飢えと小さな飢え
「飢え」について、第一章の冒頭で、ハンディは「小さな飢え」と「大きな飢え」の例えを出しています。貧困国には二つの飢えがあります。「小さな飢え」とは最低限生きていくために必要なものを買うためのカネへの欲求、「大きな飢え」とは「人生はいったい何のためにあるのか」という問いへの答えに関するものです。

日本もかつて二つの飢えを持っていました。小さな飢えは幸いにして克服しました。しかし、大きな飢えはどうでしょうか。小さな飢えを満たせば大きな飢えを解消できるという思い込みがあり、そのために人々は明日を信じて努力を重ねました。今の私たちは祖父母の代よりはるかに豊かです。たとえ日々の生活がかつかつだという人でもそうでしょう。しかし、果たして大きな飢えは満たされたでしょうか?

「『大きな飢え』は『小さな飢え』の延長線上にはない。まったく違う何ものかだ。」とハンディはいい、大きな飢えを満たすためにわれわれは何をすればよいかを考察しています。それは一言で言えば「人生の真の目的を発見すること」なのですが、それは容易なことではありません。ハンディ自身、青年時代は自分以外のものになろうとし、カネと地位を人生の尺度にしたと書いています。

それぞれの「白い石」
人生の真の目的のことをハンディはヨハネ黙示録の一節「霊が告げた。勝利を得るものには、白い石を与えよう。その石には、これを受ける者だけが知りえる新しい名が記されている」から引用して「白い石」と呼びます。こうした考え方の伝統は起源がわからないほど古く、洋の東西を問わないものなのだろうと思います。人生とは結局、真の自己を見出すための旅だといえるからです。

何が勝利か、何が白い石かはそれぞれの人によって異なります。経営学とかけ離れた話のようにも思えますが、アメリカのビジネス書には「soul(魂)」という語を含んだものがたくさんある、とハンディは指摘しています。先進国では魂の乾きを感じる人がますます増えているのです。

白い石を一挙に若いうちに見出す人はいない、とハンディはいいます。身体の成長に一足飛びということがないように心の成長にも体験しなければならない段階というものがあるからです。それぞれの人が白い石の探求に真剣になるとき、その結果としてより品位ある社会というものがあらわれてきます。

つまるところ、白い石や品位ある社会というものは、国家や政府が与えてくれるものでも、他の誰かが私にかわって探し出してくれるものでもないのです。自分で探求し自分が社会へ参加することによって作り上げていくしかありません。

こうした個人の探求への欲求がさらには「法人」にも影響を与えつつあることを彼は本書の第3部で記しています。法人にもよりよき社会市民としての役割期待が増しています。多くの市民が参加して運営される法人は、株主の単なる財産ではなく、経営者も従業員も参加した「共同体」としての姿がさらに顕著になっていくと指摘しています。

もっといい会社、もっといい人生―新しい資本主義社会のかたち
もっといい会社、もっといい人生―新しい資本主義社会のかたち
チャールズ ハンディ Charles Handy

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