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2005年8月 6日

叡知の海・宇宙

◇◆第105回◆◇

4531081447叡知の海・宇宙―物質・生命・意識の統合理論をもとめて
アーヴィン ラズロ Ervin Laszlo
日本教文社 2005-03

by G-Tools

包括的な万物の理論・意識
副題にあるように、本書ではこれまでの哲学と科学をすべて包括する壮大な理論が語られています。ラズロは「包括的な万物の理論」をここで示そうと試みています。彼がその立脚点としたのは「意識」でした。古典的な科学で意識や意味というものは問題になりませんでした。むしろ、中世の神万能の世界観から抜け出し、世界を機械的なものととらえたからこそ、その後の驚異的な科学の発達があったのです。

しかし、それが究極のところまでいったとき、極大や極小の世界で再び世界は機械的世界観では説明しきれない姿を見せはじめています。物質を分割しつくした先に現れた究極の粒子である量子には「非局在性」という性質があります。量子はある一瞬にある一箇所に存在するのではなく、あちこちに同時に存在するのです。

量子の世界では存在は奇妙であり、非局在性ということは時間も距離も量子にとっては何の障壁にもならない、ということになります。これが究極の「存在」だとしたら、この世界の基底を支えているものはいったい何なのでしょうか。

ありえないような精緻さを支えているもの
極大の世界でも驚くべきことが明らかになっています。宇宙の始まりのビッグバン、最新の観測結果によれば、このビッグバンは10億分の1ほどのありえないくらい精緻な値に調整されていたことがわかってきています。それよりほんの少しでも多いか少ないかすればこの宇宙は存在しないのです。

この「ありえないような精緻さ」は人類の進化にもあてはまります。古典的な進化論では、遺伝子の突然変異と環境適応がランダムに起こって単細胞生物が人類まで進化したことになっています。しかし、地球の45億年ほどの時間でランダムなだけでは、この進化は難しいというのが明らかになってきています。それはサルがでたらめにキーボードを叩いていたら、シェイクスピアの作品が生まれていた…というようなものだからです。

あらゆる情報の場「量子真空」
ここでラズロはそこに「情報」があったといいます。これは単なる情報というよりも、「形を与える」という意味での「イン・フォーメーション」です。この宇宙は情報とエネルギーが満ちた”情報体としての宇宙”、”意味を持った宇宙”なのです。ラズロはこれらすべての情報と存在が生まれる場として量子真空(アカシック・フィールド)をとらえています。

全宇宙のあらゆる生成物はこの量子真空から情報と物質を得てなりたっているとラズロはいいます。第8章で彼は意識と量子真空のつながりについても明確に語っています。一般に今知られている脳科学では、意識は脳という器官が生存の必要上生み出したもの、ということになっています。しかし、ラズロは、脳は量子真空に蓄えられた意識や情報を個人におろしてくるための受信装置でしかない、といいます。

意識は本来個人を超越したトランスパーソナルなもので、私たちは個人用にファイルされた意識をそのつど閲覧しているにすぎないのです。この理論がきわめて説得力をもっているのは、これによって臨死体験や、体外離脱、前世記憶、死者とのコミュニケーション、超常現象といったものが容易に説明できる、という点です。

すべてが意識を持つ
また、ラズロは意識は人間だけにあるのではなく、すべての物質にある、といっています。根本素材の量子そのものすら何がしかの意識を持っているのです。こういうことは、直感的になんとなくわかります。すべてのものに神が宿るとしてきたアニミズムの考え方にもきわめて近いものでしょう。

この宇宙で起こるすべてのことはこの量子真空にたくわえられている、とラズロは語ります。この宇宙はたったひとつの宇宙ではなく、転生を繰り返す宇宙だからです。10億分の1という精緻さにビッグバンが調整されていたことの背景にもこれがあります。宇宙を生み出すさらなる母宇宙(メタヴァース)というものがあり、そこから何度も宇宙は進化しながら生み出されてくるのです。

ラズロはこのイメージに最も近いものとしてインドの古い哲学にあらわされている「アカーシャ」を取り上げています。それがアカシック・フィールドの名前の由来です。

「空であると同時に充溢であり、すべての存在を生み出し、すべての存在が再び環っていくフィールドがあり、そこにはまたすべての存在が営んだことが、どんな些細なことも永遠に記憶されている」(訳者あとがき)、というラズロの提唱するアイディアの魅力は、機械論的世界観の持つ空虚な無意味さからわれわれを解き放つ力がある点だと思います。生きることは「シジュフォスの悲劇」ではない、という可能性が見えてくるからです。

叡知の海・宇宙―物質・生命・意識の統合理論をもとめて
叡知の海・宇宙―物質・生命・意識の統合理論をもとめて
アーヴィン ラズロ Ervin Laszlo

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