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2005年8月17日

簡素の精神

◇◆第107回◆◇
簡素の精神
岡田武彦   致知出版社 1998

日本文化の底に流れる「簡素」
日本文化の最大の特色は「簡素」ということです。日本文化の底に流れる精神がこれであり、そのことを著者は文化のあらゆる面にわたって具体的な例を示してわかりやすく説いています。そして、その簡素は決して貧弱とか稚拙というものではなく、いわば、豪華さのきわまった先にある「文極まれば素に反る(飾りをつきつめていくと、もとの飾りのないものに戻る)」という精神を基盤としたものであるのです。

もちろん、豪華絢爛なものも日本文化の中にはあります。しかし、簡素枯淡、閑寂幽玄できわめて洗練されたものというのは、日本文化固有のものです。

そうした文化が起こった背景には、日本が温帯を主とし、亜寒帯から亜熱帯にかけて長い海岸線をもつ火山列島であるということが大きく影響しています。気候はおおむね温暖で、雨に恵まれ、規則正しく穏やかに変化していく四季に包まれています。厳しい自然を克服し、勢い自然と対立し自然に対して支配的になる大陸の文化とは異なる文化が発達していったのです。

自己主張が強く装飾過多な大陸文化と自己抑制的で簡素な日本文化
西洋文化との比較だけでなく、日本に影響を与え続けた中国など東洋の大陸諸国の文化とも日本文化はかなり異なる性格を持っています。たとえば、言葉ですが、西洋語も中国語も主語主導型の言葉であり、自己主張が強く、思弁に長け理論的です。一方、日本語は述語主導型で、自己抑制的で、直観的、情緒的です。

この特色をあらゆるところに見ることができるのです。過剰なまでの装飾をほどこすヨーロッパや中国の宗教建築に対し、極限まで装飾をそぎ落とした伊勢神宮。長いソネットが発達した西洋に対し、言葉をきりつめていった俳句。濃厚な調味をほどこす西洋料理や中華料理に対し、素材の味わいを生かす日本料理(刺身など)。

日本的簡素がもっとも端的に現れたのは茶道です。利休、織部、遠州など総合芸術としての茶道の大成者たちを生み、料理、生花、日本庭園、建築、陶芸、など多くの分野に影響を与えました。

日本人はいつの時代も大陸から多くのものをとりいれてきました。外来文化を容易に接収し、それを日本的風土の中で、昇華し、日本好みのものに洗練させていく、というのが日本人の特色です。これこそが日本人のオリジナリティなのです。

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