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2005年7月21日

「あの世」からの帰還

◇◆第100回◆◇

4531081439「あの世」からの帰還―臨死体験の医学的研究
マイクル・B. セイボム Michael B. Sabom
日本教文社 2005-02

by G-Tools

臨死体験とは
臨死体験とは、心停止となり、臨床医学の観点からすると限りなく「死」に近づいた人が救命救急などの手段によって蘇生し、その間に「経験した」と語る不思議な現象のことです。ずっと昔からこうした現象は知られていましたが、ここ30年の間に救急医療が飛躍的に進歩し、こうした報告をする人の数が増えました。

この分野の先鞭をつけたのはレイモンド・ムーディの『かいまみた死後の世界』です。著者は心臓外科の専門医として開業するかたわら、アトランタの病院にも勤務し、数多くの心停止患者を診てきました。面白いのは著者は心霊現象などには全く興味がなく、魂などというものは幻想と思っている「正統派の医者」だったことです。ムーディの本にふれたとき、これはインチキに違いないと思い、それを証明する目的で心理学者と共同研究を始めたのです。

ところが、意外にも面接した多くの患者が恐る恐る臨死体験を語り始めました。著者が科学者だと思うのはこれらの事例を示すにとどめ、「これで魂は存在する」とか「死後の世界がある」などと決めつけてはいないことです。臨死体験を著者は大きく二つに分けています。

自己視型と超俗型、二つの臨死体験
ひとつ目は「自己視型臨死体験」です。これは意識不明になっている自己の肉体から脱け出し、蘇生のために全力をあげている医療者たちの上からその様子を眺めている、というものです。この体験の特徴は、まさにその人がその場でそれを見ていたとしか思えないような詳細な目撃談を話すということです。心停止時蘇生処置は、素人が想像や伝聞で再現できるものではありません。

ふたつ目は「超俗型臨死体験」です。これは暗いトンネルを抜けて明るい光に満ちた世界、非常に美しく心地よい世界に入り、何らかの存在に出会うというものです。この二つをいっしょに体験する複合型の臨死体験というものもあるようです。蘇生した人たちは、臨死体験をしていた間は痛みも苦しみもなく、とても気持ちがよくて、もう肉体に戻りたいとは思わなかったと語っています。

脳内幻想説とその限界
欧米では医学的な臨死体験研究の歴史は長く、その立場は大きく二つに分かれています。臨死体験が霊的な体験であることに否定的な研究者は、死に瀕した脳が見る幻想だという「脳内幻想説」を唱えています。従来の医学や死の定義から逸脱せずに臨死体験を説明しようとすると、この説に落ち着かざるをえないようです。

本書の後半で、著者はこの説では説明できない事例をあげて疑問を呈しています。科学的立場にたてば、臨死体験というものが何か、はまだはっきりとはわからないというのが今の段階では適切な説明なのではないか、と私は思います。

臨死体験者の人生観の変化
それが何か、はわからなくても臨死体験をプラスに生かすことはできます。著者は臨死体験者の多くに人生観の変化が起こると本書の最後に書いています。その特徴としては次のようなものがあげられています。

1)死に対する不安が劇的に減少する。
2)肉親や親しい人の死に際しても彼らが苦痛のない安らかな世界に旅立ったことが「わかって」いるのでそれに対する苦しみや悲しみが軽減する。
3)人生に意味と目的を感じられるようになる。

これらは、今の社会では人々の心の中に大きく根を張っている不安です。そして、物質還元主義的な考え方ではこれらの問題を払拭するすべがありません。著者は体験者たちの話を聞き、彼らの生と死を身近に体験したことにより、「宇宙の法則」に対して謙虚な姿勢を持つにいたったと書いています。

その宇宙の法則とはかつてアインシュタインがこう述べているものです。「科学を真剣に追及しているものは誰であれ、宇宙の法則の中に神の霊が顕在していることを確信するに至る。神の霊は人間の霊をはるかに凌ぎ、神の霊を前に人間は自らの力のささやかなるを知り、謙虚にならざるを得ないのである」


「あの世」からの帰還―臨死体験の医学的研究
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マイクル・B. セイボム Michael B. Sabom

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