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2004年5月24日

フィロソフィー・ジム 「考える脳」をつくる19の扉

◇◆第38回◆◇

4270000074フィロソフィー・ジム -「考える脳」をつくる19の扉
スティーブン・ロー 中山 元
ランダムハウス講談社 2003-12-12

by G-Tools

哲学的な思考は、考える道具
ここで著者が言う「考える脳」とは、”哲学的なものの見方をする”ということです。哲学というと、なんだかわけがわからない、現実離れした理屈を捏ね回している学問という先入観がある方も多いでしょう。 実際に哲学的な思考というのは、「意識はどこにあるのか」「私とは何か」というような、考えても答えが出ないような問いを突き詰めて いきます。

意識がどこにあるかって? そんなことが日常生活に何の関係があるんだ、と言われるかもしれません。しかし、哲学は単なる思考遊戯ではないのです。哲学的な思考はものごとの決定や善悪の判断に大きな役割を果たす「考える道具」だ、と著者は言います。本書は遺伝子工学、 同性愛、臓器移植、ロボットなど身近なテーマを取り上げながら、 私たちを哲学的な思考法へと誘います。

著者スティーブン・ローはロンドン大学ヘイスロップ・カレッジで教鞭をとる哲学者です。しかし、ここにいたるまでの経歴はちょっと 変わっています。予備校を除籍されて、数年間は郵便配達夫をしていました。それまでAクラスの成績などとったこともなかったのです。それが、哲学と出会って、人生が一変。大学に進み、極めて優秀な 成績をおさめ、オクスフォード大学クイーンズ・カレッジで博士号を取得しました。

できるかどうかではなく、すべきかどうかの判断が必要
今の社会で問題解決のために最も有効な手法とされているのは科学的な思考です。しかし、科学ですべての問題が解けるわけではありません。本書の中でも「これから生まれてくる自分の子どもに遺伝子操作を加 えることは許されるか」「機械が発達し、ほとんど人間と見分けがつか ないようなロボットが生まれたとき、そのロボットは意識を持つのか、 人権は?」といったこの先人類が直面するだろう課題をあげています。 これらの問いに科学は答えることができません。できるかどうか、ではなく、そうすべきかどうかについての判断は哲学にゆだねるしかないのです。

私たちは毎日、ごく些細な問題のみを考えながら、いわば近視眼的に生活をおくっています。住宅ローンはどうしようか、とか、歯医者の次の予約はいつがいいか、彼女を誘うにはどうしたらいいか、などということです。しかし、哲学的に考える脳を手に入れると、日常生活から一歩離れ、生活全体を俯瞰してながめることができるようになり ます。そうするとこれまでは当然だと思っていたことを別の角度から見ることができるようになるのです。森全体が見えるようになる、と いうべきでしょうか。

ローは哲学的な思考の重要性についてこう言います。

「ぼくは、一歩下がったところから自分の生き方を考えたことのない人、自分の生活をまったく吟味したことのない人というのは、生き方が 浅いだけでなく、ときに危険に直面する場合があると思う。<中略> ぼくたちは、周囲から道徳的に指図されると、疑問も持たずに従ってしまう傾向がある。これがときとして破滅的な結果につながる。<中略>

哲学的なトレーニングを積むと、自分の力で考えるために必要な技能が手にはいる。そしてほかの人々が自明のこととして考えていることを、疑ってみることができるようになる。勇気をもって、道徳的な見解を 主張できるようになる。」

哲学的なものの見方を手に入れるということは、思考に翼をつけることです。地に縛り付けられることなく、自由な高みから自分の人生を眺める位置を手に入れるということ。「自分で考える」というのは訓練しなければ、獲得できない技能なのです。


フィロソフィー・ジム -「考える脳」をつくる19の扉
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スティーブン・ロー 中山 元

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